授業の名言から考える (4)
森  邦 博

 一年の第一単元において、学習記録指導を丁寧に、具体的に徹底して行う

 表題は「大村はま国語教室12国語学習記録の指導、U学習記録指導の実際の第1節、学習記録への出発」(P107〜)からの抜粋である。
 大村先生の一年の第一単元「あいさつ」(S39年4月)の授業記録はこう始まる。
「では、まず上の欄の外、ここよ、ここに((1)と板書する)こういうふうにかっこして1と書いて。 この時間は、一年の、国語の時間の一時間目ですから、こういうふうに書いておくのです。あした、あしたも国語の時間ありますね。あしたは、これが2になるの。国語の2時間目。(略)これから毎時間きちんと、この時間を書くのです。私も、いつもここに書きます〜(以下略)。」
 丁寧な口頭指示。その後机間巡視して確かめる。そして、
「なかなかきれいに書けました。さあ、今度は二行目、「目的」と書くんですが、少し下げて、一行目の「自己」の「己」と並ぶくらいがいいでしょう。「目」「的」は「紹」と並びます。〜」
と具体的に分かりやすい。そしてやっぱり机間巡視である。
 「次は「感想」。二字とも下に「心」という字がついていますね。「感想」と形よく、位置をうまくとって書きなさい。(略)三は少し長いことばです。三べん言いますから覚えて書いてみなさい。初めのところ、すぐあわてて書かずに、全体を聞いて分かってから書いた方がよく書けます。(略)では言いますよ。」
 聞き取って書くへとステップアップしている。
 最初は「どこも切らずに比較的早く、全体がひとまとまりになって聞こえる」ように話して聞かせ、次には「切って読む」に変える。三回目の前には「間をゆっくりと取り」態勢を作らせて聞き書きをさせる。今度も机間巡視、そして評価。

 具体的で丁寧な指導の過程を通じてやり切らせてしまう展開になっている。中学一年生の国語科の授業でも、第一時間目はこれだけ丁寧に個々の子どもの学ぶ姿を育てていく授業が必要と考えて実践されている。
「学習記録を書いていく上での基本的な方法に、自然にひとわたり触れ、これから書いていくための基礎を置くこと」を目的にしたためとの解説である。
 まして小学校の授業では・・・。と考えさせられることは多い。

 大村実践では、卒業期には、三年間の自分の学習記録を教材にした授業が計画されている。学習記録は三年間を見通した大単元なのである。この時間は何を特に大切するのか、遠い目標と地道な足元の指導、両者相まってこそ子ども学びが積み上がり学習者が育つ確かな実践ができる。こんなことを改めて教えられるのである。

 学期の半ば頃になると、「ノートをきちんと書かない子どもが多くて困る」「何度も注意しているんだけれども直らない」「授業の基礎はノートだと言われるけれど、どうしたらどの子もちゃんと書くようになるのだろう」との嘆きや悩み聞くことがある。
 出来て当たり前なことができるように育てるには、@一人一人に定着をするまできちんとやらせ切るきめ細やかで丁寧で具体的な指導の工夫と、A個々の子どもの学びを見守り確かに評価していくこと。このことの積み重ねがあってこそだとも言えるだろう。
(京都女子大・附属小非常勤講師)