子どもの疑問から授業を組み立てる〜「海の命」
蜂 屋 正 雄
物語文の学習は、初発の感想から授業を始めるようにしている。 範読した後、子どもたちに感想を書かせた。本単元は「やまなし」と同じように著者の情景描写や心情表現に特徴があって、「答え」を求める子どもたちには「わからない」教材文であるようであった。「感想を書きましょう。わからなかったことや疑問も書いてほしいです。」というような指示をして、そのわからないところから学習を始めようと考えた。また、初発の感想から、個々の理解度をはかり、授業展開を考えるため、分析を行った。 【子どもたちの感想と分析】 〇太一が村で一番の漁師になっていたのがすごい。 10人程度の子の感想。文章をそのまま読み取っている。どうすることが「村一番」なのか考えさせたい。 〇主人公は、父を殺した大魚に復讐心をあまり持たない心が優しいと思った。 「優しさ」を見つけて感想に書いてくる子も多い。「優しい」で終わらない話し合いを目指したい。 〇やまなしと同じで、あまりはなしがわからない。 漠然とわからないと書いている。具体的な言葉に注目させて考えさせたい。 〇「おとう、ここにおられたのですか。」ってどういうこと。 〇なぜクエを殺さなかったのか。 物語の核心につながる疑問。この疑問に答えられるように授業を展開したい。 〇「巨大なクエを見つけたのを殺さなかったのは誰にも話さなかった。」のはなぜだろう。 太一の性格や信条の問題。いろいろな意見が出てきたが、全員で一つの答えに集約はしなかった(できなかった)。 〇「千匹に一匹」というのが特にわからなった。 「海の命」という題名にもかかわってくる言葉、「海で生きる」という言葉の意味ともつながるので、教材文をもとに考えさせたい。また、まわりの子の考えや気づきをもとに展開したい。 〇「追い求めているうちに不意に夢は実現するものだ」という意味がよくわからなかった。 一人前の漁師としての父親の背中を追いかけている太一の行動に気づかせたい。 〇あの大きなクエは本当に父の生まれ変わりだったのか、父が見つけたクエは緑色の目なのに、太一の見つけたクエは青色の目で、ちがうので父が見つけたクエの子孫が太一のクエだと思った。 細かな記述の違いに気づいていた。ほかの子も「ほんまや」と、丁寧な読みをしようという学習につながった。 以上のような、教材分析と子どもの理解度をもとに、人物やキーワードの関係を相関図にしながら授業を進めた。毎時間の授業感想で子ども一人ひとりの発見や理解の深まりを見ていこうとしたが、その時間の学習のめあてを明確に出し切れず、感想の書かせ方も漠然としたものになり、学習の深まりを自覚させる目当てと振り返り、また、ノートづくりが指導者側の課題となった。 (草津市立矢倉小)
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