逆上がりの言葉
弓 削 裕 之

 2年生の体育の課題に逆上がりがある。放課後遊びの時間に、一人の女の子が何度も逆上がりの練習をしていたので、応援をしにグラウンドへ行った。いろいろなサポートをしたが、もう一息のところ。また明日かな…と思った時、同じクラスの友だちが隣の鉄棒にやって来た。「練習してるん?こうするんやで」と、その子はくるんと逆上がりをして見せた。次の瞬間、思い切り地面を蹴り上げた女の子の逆上がりが、見事成功した。

 別の日、休み時間に鉄棒のところへ行くと、逆上がりの練習を手伝っている子を見かけた。「こうだよ・・こう」と身振り手振りで教えていたが、相手に上手く伝わらず困っている様子だった。どうやら、曲がっている足が気になるようだった。腕を組み、時間をかけて悩んだ末に、その子は「カップに挿してあるストローのように」とアドバイスをした。すると、友だちは「ああ~」とイメージをつかむことができた様子で、前よりも空に向かって足を伸ばすことができていた。その姿は、確かにストローのように見えた。

 「友だちパワー」のすごさと、子どもが選ぶ言葉の素敵さに感動した私は、「逆上がりアドバイスカード」を作った。カードには、
○アドバイス(逆上がりのコツ、こういうことに気をつけたらわたしはできた、など)と、●メッセ ージ(はげましのことばなど)の二項目を設けた。自由に取れるように置いておくと、鉄棒が大好き な子や、最近逆上がりができるようになった子たちが「よしきた」とすぐに書いてくれた。

○キリンの首みたいに足をぴんとのばせばいいと思います。●さか上がりをがんばってください。
○おなかにぼうをくっつけてあたまの上にボールがあると思ってそのボールをけるようにして回ればいいと思います。●がんばればさか上がりできるよ。
○てつぼうとおなかをはなさず、足とてつぼうがつくとやりやすかったです。●今言ったことばを気にした人は、だいたいの人は、さか上がりマスターだ!
○一ばん大切なのは、じしんをもつことです!●わたしもさいしょはできなかったけど、れんしゅうしたらできたので、れんしゅうすればかならずできます!じしんをもってね!

 チャイムが鳴ると、寒空の中、今日も鉄棒に向かう子どもたちがいる。練習前、教室に掲示してあるアドバイスカードに目を通す姿が。友だちの言葉が、励む彼らの背中を押してくれている。
(京都女子大附属小)