長く書ける、長く話せる
西 村 嘉 人

 本紙の6月号に「新しい出会い新しいチャレンジ」のタイトルで、1人学級の担任をしていることを書いた。1日のふり返りを書く活動を続けながら、言葉の成長を見つめている、という内容であった。その6ヶ月後の話である。11月半ばの舞台芸術鑑賞会の感想文である。

 1、2時間目の時、今日はげきを見ました。「銀河鉄道の夜」を見ました。すごかったところは、一生けんめいダンスとかセリフをまちがえないようにしていたのがすごかったです。出ていた人はジョバンニとカムパネルラといろいろな人が出ていました。ソアレスゆのちゃんも出てくれました。ゆのちゃんだとすぐに見つけられました。私が一番いいなあと思ったところは、友だちが海にしずんじゃって、カムパネルラが海の中へ入って、友だちはぶじに助かったんだけれど、カムパネルラが海の中にしずんじゃって、そこが一番じーっと見ていました。(後略)

 まだまだ続くのだが、約600文字の感想を15分足らずで書き上げた。短い時間で、ずいぶん長い感想文が書けたことをまず誉めた。しかし、それ以上に「一番いいなあと思ったところは、(略)そこがじっと見ていました。」と、自分が感動した場面をじっと見つめていた自分に気づいて、文章に表したことが最も誉めたいことであった。

 出来事を辿って書くことはこれまでからできていて、作文を書いている横で「それで」「それで」とタイミングよく声をかけることで、徐々に長い文章が書けるようになっていた。しかし、「そのときどんな気持ちだった?」と間の手を入れると、鉛筆が止まってしまうことが殆どだった。作文のたびに「それで」「どんな気持ちだった」を言い続け、少しずつ書けるようになってきたのである。

 毎朝の活動「昨日の話」でも、「それで」「それで」「どんな気持ち?」を言い続けた。
 職員室へ「朝の挨拶」に行く時間に先生方と交わす言葉数もずいぶん増えた。校長先生とは長い日には10分間ほど話をして出てくる。
「校長先生と盛り上がってましたね。どんな話でしたか。」
と声をかけると、
「始めはねえ、・・・」
と話してくれる。

 今、彼女のポイントは「長く」である。長く書く、長く話すことが心地よいのだそうだ。みんながにこにこしてくれるから。
(彦根市立稲枝西小)