鳥獣戯画を読む
蜂 屋 正 雄

 本教材は光村図書(6年生)の説明文である。大変魅力的な文章で、書き出しも会話文から始まるなど、読者をひきつける表現技法にあふれている。一方で、「人類の宝」と言い切る高畑勲の膨大な知識と経験に対して、子どもたちの生活経験や知識が追いついておらず、批判的に読むことが難しい。

 1学期に取り組んだ「笑うから楽しい/時計の時間と心の時間」においても、批判的に読む方向では なく、著者の主張とその根拠となる事例の良さを見つけていくという形で学習を進めた。

 今年の校内研修では「自分の言葉で伝える力の育成」というテーマで取り組んでいる。「鳥獣戯画」 導入部では語り掛けで始まるところや体言止めでリズミカルに論を進めるところがあり、その真似を しながら、書く表現方法を新しく取得させたいと考えた。

 読み取りは、「著者が鳥獣戯画の良さを書いているところに線を引く」という活動から始めた。
 高畑勲さんと同じように「人類の宝だ」と感じた子。
○「古さと守り続けてきたことだけで人類の宝だ」と感じた子。
○時々入ってくる問いかけの文章がいい。
○「パッとページをめくってみてください」といって動きを見せるのが面白い。
と、内容について線を引く子が多く、導入部の表現技法に言及する子がいなかった。

 読み取りとしては、十分に筆者の意図をとらえられたと判断したので、導入部の表現技法に注目し、書くプリントを用意した。手引きにもある活動で「笑うから楽しい」の書き出しと「『鳥獣戯画』を読む」の書き出しを見比べて、「会話文で始まっていること」「体言止めでリズムよく進んでいること」「実況中継のように進んでいること」など、気づいたことをまとめ、教材文にある2枚目の挿絵「三匹の応援蛙」の解説文を書くというものである。
○ドシン! 勢いよく投げられた兎に驚く。笑っている兎。あまりに急なことに応援蛙らは目を見開いて飛び上がった。
○ひるんだ所を蛙がまたもや「蛙がけ」。投げとばされた兎は思わず降参。それを見た蛙は大笑い。「ゲロロッ」「ゲロロッ」「ゲロロッ」
○「いけいけ!」三匹の応援蛙たちが相撲を取っている蛙と兎を見ていました。兎が気を抜いた所に気づき、兎を投げとばす蛙。「ゲロロッ!」応援蛙の喜びの声。この試合に勝利したのは…。
など、語り掛けで始まっているところや体言止めでリズミカルに表現している子もいる一方で、体言止めの表現はまだ子どもたち自身が使うにはハードルが高いようで、新しい表現技法を使いこなすというところまではいかなかったが、「こんな説明文もあるのだ」「こんな伝え方もあるのだ」と気づくことができた学習となった。
(草津市立矢倉小)