日本教育カウンセリング学会研究発表大会に学ぶ
飯 沼 俊 雄

 10月5日・6日に、2019年日本教育カウンセリング学会第17回研究発表大会に参加した。大会テーマは、「これからの教育改革を成功させるキーポイントは何か―主体的・対話的で深い学びとなる授業改善とインクルーシブ教育 推進を両立させる教育カウンセリング」。記念講演会とシンポジウム、個人発表、研修会が2日間に渡って開催された。

 記念講演会で早稲田大学教育・総合科学学術院河村茂雄教授は、これからの学校教育には、「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」と「主体的・対話的で深い学びとなる授業改善」の2つの大きな取り組みを確実に展開していくことが期待され、この2つの取組みを適切に統合し、両方の実践がともに効果が上がるような展開のあり方を検討しなければならないと指摘した。

 実際に、学校現場において、特別支援教育と主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善の統合は、試行錯誤しているのが現状である。両者をともに推進していくキーワードとして、河村教授は「集団での学び」と「子どもに対する指導のあり方」を挙げている。

 これからの時代に求められる資質・能力は、他者との関わりを通して、自ら獲得することで身につくものである。それゆえ、河村教授は、学習の成果には子ども同士のかかわり合いから生まれる相互作用が良好で建設的な状態であることが大事であり、その相互作用の質を左右するのは、その場を包む学習集団の状態、つまり、学級集団の状態が、子ども個々の学習に大きく影響すると述べた。さらに、学校教育におけるカウンセリングマインドの発揮とは、様々な教育活動場面で子どもの自主性・主体性・自律性を尊重するものであり、それらを支援するような指導行動が教師には求められることも言及された。

 シンポジウム、個人発表では、多くの研究や事例発表を通して、その考えや思いを、全国各地から集まった教育関係者と交流することができた。シンポジウムでは、「学級経営コンサルテーションをどのように成功に導くか」に参加した。学級経営コンサルテーションの成功には、学校組織による計画的な取り組みが必要である。どのように導入し、どのような組織で、どのような計画で、どのように取り組んで成功に導いているかについて多くの方と議論した。特別支援を必要とする子どもが学級の中に自然と溶け込み、支援を受けていることも目立つことなく子どもが主体的・対話的で深い学びがある授業を展開するために、学校全体で取り組む大切さを学んだ。学級集団づくりの重要性を確認できた2日間であった。
(湖南市立三雲東小)