巻頭言
現場からの報告 〜私立小学校六年生の言語環境における一考察〜 (1)
長 谷 川 一 郎

 私立小学校教師として三十五年目を迎えた。その三分の一以上を六年生の担任として勤務した。そして、今年もまた六年生の担任として新しい一年を過ごしている。

 さて、私立小学校の六年生といえば、中学受験を間近に控え、自身の成績や進路が何事をするにおいても念頭から離れず、多感な思春期とも相まって精神的にナーバスになりやすい。当然、担任も小学校生活最後の一年において種々の行事や様々な学習活動が子ども達の手によってうまく運ばれていくよう、日々の学習指導や生活指導に充たっていくと共に、如何に受験に向かわせるか、サポートできるかという課題も常に抱えているのが現状である。

 多くの児童は、受験に備えて進学塾に通っており、宿題などの課題に日々追われている傾向が強 い。また、週末には、模擬試験に時間を費やすことも多々ある。

 そして、そんな子ども達の束の間の楽しみはといえば、ゲームをしたり、ユーチューブを見たりすることが多くを占めているようである。
 毎朝、クラスの三分の一程の児童は、八時前の早くに登校してくる。眠たそうな表情で教室に入って来るのかと思っていると、そうではなく、ちょっとした旅から帰ってきたように机に荷物を下ろし、始業の準備をしながら元気に喋り出すのである。
「ユーチューブの○○はもう見た?」「ゲームの○○は意味がよく分からんわ」などと、ユーチューブやゲームの話題で話がはずむ。ただ、さすがは受験生。月曜日においては、模擬試験の問題や点数のことで話に花を咲かせる場面もあちらこちらで見られる。

 さて、前置きが長くなったが、私は、最近特に、六年生の子ども達の言語環境について強い危機感をもつようになった。 (次号に続く)