新しい出会い 新しいチャレンジ
西 村 嘉 人

 今年度は、特別支援学級の担任をさせていただいている。在籍は5年生の女子児童1名である。昨年度、交流学級の担任をしていたので、初めての顔合わせではない。 しかし、在籍1名の学級で何をどのようにすればよいのか迷うばかりの2か月。最近少し明かりが見えてきた。
 前担任が残してくれた「一日のふり返り」を担任して以来続けている。帰りの会の時間を使ってホワイトボードに一日の生活を振り返って作文を書く時間である。

     4月11日(木)
 昼休みに、わたしと幸乃ちゃんとねねちゃんとゆのちゃんの四人でカロムをしました。ちょっとだけむずかしかったけど、カロムができてうれしかったです。

 4月16日(火)
 5、6時間目のとき、花の絵をかきました。花の絵はちょっとだけむずかしかったけど、じょうずに絵をかいて、とてもうれしかったです。

 4月24日(水)
 3時間目のとき、ジュリア先生といっしょに英語をしました。さいしょに" How many 〜s ?”クイズをしました。ちょっとだけ数を数えるのがむずかしかったけど、あとからはだんだんなれてきてうれしかったです。さいごに数あてをしました。みんなとできてうれしかったです。

 わずか5分ほどの時間ですらすらと書く彼女の文章が面白くて毎日の記録に書き写し、それを学級通信として保護者にお伝えすることにした。(下線部は今回の原稿で付け足したものである)パソコンに打ち込んでみると彼女の文章のパターンが見えてくる。
 ところが、時々このパターンが変わる。上の文章では「うれしかったです」で終わらずにもう2文付け加えている。

 5月7日(火)
 音楽のとき、「こいのぼり」と「すてきな一歩」を歌いました。きれいな歌でうれしい気持ちでした。
 給食を食べてすぐに図書委員の仕事をしたので大変でした。

 さらに上のように「うれしい気持ちでした」と言葉が変化し、さらに段落を変えてもう一つ話題と付け足して文章を終わっている。

 5月16日(木)
 森田先生といっしょにみんなで体育をしました。さいしょに鉄ぼうをしました。前回りはできたけど、さかあがりはちょっとだけできてきました。さいごに「ねことねずみ」のゲームをしました。「ねことねずみ」はちょっとだけややこしかったです。

 彼女の文章パターンを考えると「さいしょに」「さいごに」という言葉を使うのは数少ないのだが時々出てくるようになった。しかも、徐々に文章が長くなってきた。

 5月31日(金)
 5、6時間目のとき、西嶋先生とみんなといっしょに図工をしました。「すみっこぐらし」のパズルを作りました。糸のこぎりを使いました。ちょっとだけむずかしかったけど、後からはだんだんなれて、じょうずに切れてうれしかったです。

 毎日彼女のふり返りを書き写しながら小さな変化を楽しんでいる。たくさんある一日の出来事の中から何を選ぶのか、どのような書きぶりで表すのか、を楽しんでいる。
 語彙を増やすために取り組み始めた「擬音語、擬態語」を文意と組み合わせる遊びや国語辞典を使った言葉集め遊びなどの効果はまだまだ出ていないが、いつかきっと使えるのではないかと期待している。ゆっくり1人と向き合いながら、日々の僅かな変化を見逃すまいと毎日の記録を積み重ねている。彼女の文章ではないが「だんだんなれてきて」楽しくなってきた。
(彦根市立稲枝西小)