ダウトゲーム
勝 矢 真 一 郎

 ダウトとは、「ウソだ!」という意味である。トランプでもダウトゲームというものがあり、これがなかなかおもしろい。「ダウト」を読み物教材に適用すると、おもしろい取り組みができる。教師が、教材文を読みながら「ウソ」を交えるのである。そのウソを子どもたちが見つけたら、「ダウト!」と指摘するだけの、いたってシンプルなゲームである。このゲームには以下の良さがある。

@言葉一つひとつの、細かなところまで覚えておかないとウソを見抜けないため、子どもたちが教材文を何度も読み返して、言葉にたくさん触れるようになる。
A教師の意図的な間違いによって、注目させたい言葉を自然な流れで取り上げて、考えさせることができる。
B単純に楽しい。

 @については、音読活動と組み合わせることもできる。ダウトゲームの直前に、音読を一度だけできるなどのルールにしておくと、子どもたちは「言葉一つひとつを噛みしめながら」意識的に音読をするようになる。また、事前予告しておくだけで、休み時間や家庭でも、自主的に音読してくる子がおり、教材文に慣れ親しむという側面からも、かなり有効なゲームである。やる気のある子は、このゲームによって全文を暗記できるレベルに到達することもあるのだ。

 Aについては、「たんぽぽのちえ」(光村図書2年)をもとに例をあげてみる。たんぽぽの花のじくが、「ぐったりと…たおれてしまいます」という文を「ばたりと…たおれてしまいます」に変えることで、「ダウト!」と言った子どもたちに、どこがおかしいのか、「ぐったりと」と「ばたりと」では、同じ倒れる様子でもどのように違うのかを考えさせるのである。ゲーム中の自然な流れの中で、言葉を意図的に取り上げることができるので、言語感覚を養うことにも非常に優位性がある。教師が事前に注目させたい言葉を考え、どのように間違えるのかを考えておくことで、より効果が高まるだろう。

 そして、なによりBが一番重要である。このゲームは不思議と「難易度を上げても、それに比例して子どもたちの意欲が上がってくる」という特性をもっている。子どもたちは、こちらが思っている以上に、読むことや、言葉に触れることが大好きなのだということに気づかせてくれる瞬間でもある。国語の苦手な児童も、どんなに勉強嫌いのあの子も、みんなと一緒に参加できるこのゲームは、私のクラスの鉄板となっている。
 シンプルだけど奥が深いダウトゲームで、子どもたちと言葉の勝負・・・してみませんか。
(甲賀市立伴谷東小)