「読み解く力」 向上フォーラムに参加して
北 川 雅 士

 本年度から滋賀県の学ぶ力向上プラン「読み解く力プロジェクト」の推進委員として年数回の研修と研究に参加できることとなった。この「読み解く力プロジェクト」は県の学ぶ力向上滋賀プランの「読み解く力」の育成に向けて、各市町から選ばれた教員で研究チームを作り、総合教育センター研究員の方々と、読み解く力向上のための授業のあり方について実践的な研究を進めるものである。

 5月9日には「読み解く力」向上フォーラムとして滋賀県庁にて講演会が開かれた。まず、「読み解く力」とは社会で生きていくために必要な「読み解く力」を身に付けることを目指すもので、主に「文章や図、グラフから情報を読み解き理解する力」と「相手の言葉や表情から考えや意図を読み解き理解する力」の2つの側面をもつということ。そして読み解く力には、「必要な情報を確かに取り出す(発見・蓄積)」「情報を比較し、関連付けて整理する(分析・整理)」「自分なりに解決し、知識で再構築する(理解・再構築)」という3つのプロセスがあると考え県全体で「読み解く力」の育成に取り組んでいくことの説明を受け、2名の先生の講演とパネルディスカッションをお聞きした。

 東京大学の藤江康彦先生からは、「読み解く力」と21世紀の学びについて、キーワードになる「主体性」は「間」にあるとして、子どもとヒト(教師・子ども)、子どもとモノ(教科書・教材・道具)、子どもとコト(活動・授業・教科・遊び)それぞれの間に主体性がうまれるということと、子どもの「ことば」が生まれる瞬間に敏感になり、安心して表現できる環境づくりが対話的で深い学びにつながるということを教えていただいた。

 京都女子大学の水戸部修治先生からは、「読み解く力」育成のための視点として、「@読み解く力の重要性について共通理解を図る」「A日常の学習指導の質を高める」「B学校全体で取り組む」という3点をお話しいただいた。特に日常の学習指導の質を高めるために、「読み解く目的・必要性の実感」「読み解く力の獲得・活用」「読み解き再構築したことの発信」という3つのプロセスが質の高い学習過程の構築を生み出すこと、そのためには、子どもが目的を意識できる必然性のある交流の工夫を行うことが重要で、指導のねらいを明確に把握することで、決まりきった答えを探すのではなく、自分の考えを創り上げられる課題を工夫していくことが求められることを学力学習状況調査の問題を例に説明していただいた。

 本年度から5年間の取り組みになるこのプロジェクトの前期が今年度から始まる。まだ手探りの部分もあるものの、まずは「読み解く力」について全員が共通理解を図れるように日々の授業改善から始めていきたいと考えている。まずは国語科の授業だけでなく、学校生活の全般で言葉にこだわって子どもたちと接していくなかで国語の力を伸ばしていけるように努めていきたいと考えている。
(彦根市立城南小)