卒業前の授業
三 上 昌 男

 卒業式の練習が進む中、6年生の5クラスで、国語の授業をする機会を得た。  卒業を前にした子どもたちと、1時間授業を行うのにふさわしい題材として、5つの案を考えた。

A案「連詩を作ろう」
 「卒業」「思い出」「夢」などをテーマに、グループの友だちと連詩を作って紹介し合う。
B案「筆者のメッセージを受け止めよう」
 作家、司馬遼太郎の「二十一世紀に生きる君たちへ」の文章を読み、大事に思う文や言葉をもとに、自分が受け止めたメッセージとして感想を表す。
C案「悩みの相談作文」
 下級生が学校生活で感じる悩みについて、自分の体験や考えをもとにアドバイスの文章を書き表し、交流する。
D案「校歌研究 〜校歌の歌詞をやさしい言葉で〜」
 金田小学校の校歌の歌詞を辞書を使って調べ、やさしい言葉で表し、下級生に伝える。
E案「詩を味わおう」
 「自分の番 いのちのバトン」(相田みつを)「支度」(黒田三郎)などの詩を読み、感想を伝え合う。

 どの授業にするか、学級担任に選んでもらうことにしたが、1クラスずつ別の授業をすることになった。ここでは、2つの授業について紹介しておきたい。

 連詩づくりでは、4年生の学習経験を思い出し、連詩の作品例をもとに作り方を確認した。次にグループごとにテーマを選択し、ホワイトボードを使い、マインドマップで言葉のイメージを広げた。各グループでは、1つのテーマで人数分の連詩が生まれた。

(児童作品例) 「卒業の歌」

 今までの出来事を
 思い出すための歌

 小学校でお世話になった人に
 感謝を伝える歌

 中学校への不安を
 勇気に変える歌

 みんなへの
 さよならの歌

(児童感想例) *私が第一連を書いたら、似たような言葉を使って書いてくれてうれしかった。一人では思いつかない表現も、友だちだとたくさん思いついたので良かった。どんどんつながるので楽しかった。

 筆者のメッセージを受け止める学習では、朝の学習で、教材文を黙読するよう指示しておいた。  授業では、司馬さんの紹介、本文の音読、辞書で語句の意味調べをした。それから、各自が大事に考えたい言葉や文を見つけてサイドラインを引き、全体で交流した。
 多くの児童が取り上げた表現には、「自分に厳しく、相手にやさしく」「すなおでかしこい自己」「助け合うということが、人間にとって大きな道徳になっている」などがある。
 学習のまとめとして、自分が受け止めた筆者のメッセージについてノートに書いた。

(児童ノート例) *私は、この文章を読み、特に大切にしていきたいメッセージがあります。「人間は決して孤立して生きられるようにはつくられていない。」ということです。やはり人間は一人では生きられないんだと感じます。これからも友だちを大切にしていきたいです。
(近江八幡市立金田小)