学校を改革する
廣 瀬 久 忠

 菩提寺北小学校の夏は暑かった。炎暑の続く1学期の終わり。1年生がたくさんの荷物を持って日差しの強いサイドタウンの坂を下った先で「重くてもう歩けない」と泣いているところに出くわした。
 私はいつもの巡回用原付バイクで約束先へ向かう途中だった。原付だったから乗せるわけにいかず、バイクを押して家まで付き添うと約束先を大変待たせることになる。
 そこで、職員室に助けを求めようとスマホをと探したところどうやら学校に置き忘れていた。そばにおられた通りがかりの保護者さんに頼んで「学校に電話して誰か先生の助けを」とお願いした。
 所用が終わりどうなったかとその保護者さんに電話でお尋ねした。通られたお母さんにうちまで送ってもらえたようだ。それを聞き、付き添ってやれなかったことを悔やみ、スマホがあれば、約束先に「遅れる」許しを得ることができたのにと後悔した。それと同時に連絡いただいた保護者さんに感謝するとともにホッとした。
 担任も数日にわけて荷物を持ち帰らせているが、炎暑の中、大きな黄色の引きだしは、辛かったのだと思う。その時の光景が何度も何度もよみがえった。

 それから、毎日のバイク巡回で気になっていたのが、朝の集団登校の歩みがゆっくりになっていることだった。特に月曜の朝、大きく厚くなった教科書を入れた大きなランドセルに加えて、給食袋に体操服袋、大きな水筒が太ももにまとわりつく。低学年の子どもたちにはその重さはさることながら、ひざの下にまでまとわりつく大容量の水筒が足かせになり遅々として前に進まず、登校班長が後ろをふり返りふり返り気にかけて進んでいる。副班長は最後尾で寄り添いながら急かすでもなくそばに寄り添ってくれている。子どもの体力が落ちたことにその要因を求めるより、亜熱帯化している異常気象と重量化している持ち物にフォーカスすれば、お天気には遠慮してはもらえないので、持ち物の工夫を考えることになった。

 子どもの夏休み中に私たちは会議を重ね、学校に置いておける教科書・副読本を「置き勉」することにした。ただ、学習ノートは持ち帰らせる。「どうぞノートをよく見てやってください。頑張りをほめてやってください」と9月の校報でもお願いした。
 必要に応じて時折、教科書も持ち帰らせること。さらに、絵の具セット、習字セットなど集中して持ってきたり、持って帰ることのないよう十分配慮することも重ねて決めた。重ねて、「水筒をランドセルの中におさめられるようランドセルのまわりにたくさんぶら下げぬようご家庭でも声かけをお願いします。今度、様子を見て問題点があれば改善しますので、ご意見を校長までお寄せください」と校報ではお願いを結んだ。
 次の日、文科省から教育委員会に「置き勉」の通達が出たとニュース報道されていた。

 それ以降、保護者からは概ね好評である。さらに10月に入り、ランドセルから「ランリュック」への指定変更の検討に入った。ランドセルの中身は軽くなったが、ランドセルは軽くない。最近のランドセルは企業努力で随分、素材研究もされ、平均1300グラムである。そこへ教科書、ノート、ドリル、連絡袋、給食袋、水筒等々を詰め込むと4キロ〜5キロを超えてしまう。
 そこで、市内3校で指定されている「ランリュック」に指定変更することを決めた。来年4月入学生のランドセル商戦はゴールデンウィークに終わっていると言う。特別なランドセルは幼稚園年中児が既に買い求めているという。2020年4月入学児から「ランリュック」を積極的導入していく。ランドセルも可とするが、6年後には全校児童が630グラムの「ランリュック」登校する日が来る。
(湖南市立菩提寺北小)