「ひとり読み」へ誘う 〜ごんぎつね〜
西 村 嘉 人

「ぼくは、兵十がごんをうったのはだめだと思いました。ごんは、兵十のために毎日くりやまつたけを持ってきていたのに、そのことに気づかずに、ぬすっとぎつねと決めつけて,うってしまった。悲しいと思いました。」
「わたしは、兵十がごんをうったのはしかたないと思います。兵十は、ごんはうなぎをぬすんだきつねと思っていて、くりやまつたけを持ってきてくれていることは知らなかったのだから、じゅうでうっても,兵十は悪くないと思います。」

 「ごんぎつね」の学習に入って3時間目。「第一次感想をグループで聞き合って、自分の考えとの違いを見つける」を学習のめあてに話し合わせた。冒頭のやりとりは、たまたま話し合いを聞きに入ったグループの様子である。

「えっ。そんなん、ごんがかわいそうや。じゅうでうたれて死んだんやで。」
「だけど、兵十はごんがくりやまつたけを持ってきたなんて知らんのやから。Yちゃんはどう思う。」
「わたしも、Iちゃんの言うようにしかたなかったと思う。ごんはうなぎをぬすんだんやし、くりやまつたけを持ってきても兵十に見つからんように置いていったんやから。」
「うーん。なんかなっとくいかんな。K君は。」
「ぼくは、いきなりうつのはあかんと思って読んでた。始めは悪いことをしたけど、いいこともしてるんやから、ちょっと気づいてやってもいいやん。それをいきなりうつんやから。」

 このグループの話し合いが面白くて結局ずっと聞き入ってしまった。学習を始めて3時間目でこんな話し合いができるのかと半ば感心をしながら。
 他の子どもたちの学習のふり返りを読んでみても、グループの話し合いの話題は、最後の場面に集中したようである。考えが対立したグループもあれば、「ごんがかわいそう」でまとまったグループもある。「引き合わないなあ」のゴンのつぶやきを取り上げて、ごんの兵十への思いを見つけたり「ひとりぼっち」の兵十へのごんの思いを想像する発言もあったようである。

 子どもたちのノートを見ながら、自分で学習課題を見つけて今年初めての「ひとり読み」をさせたくなってきた。「ごんぎつね」のよさに寄り掛かりながら子どもの読みを楽しみたい。
(彦根市立稲枝西小)