学習の場をデザインすることと的確な助言で支援をすること
海 東 貴 利

 びわ湖フローティングスクールは、複数校の小学5年生が学習船「うみのこ」に乗船し、1泊2日寝食を共にしながら環境学習や交流活動を行う宿泊体験型の学校教育の一環である。乗船する児童は琵琶湖の環境に関わる学習をしながら、滋賀県や琵琶湖の自然を体感し、その素晴らしさに気づくとともに琵琶湖の現状を知り、環境について考える。

 今年度から新たに就航した2代目「うみのこ」は、初代の船にはなかった学習備品を搭載し、より探求的に学習ができるようになった。水質調査のための湖水は航行中でも船内の実験室から採水することが可能になり、同時にプランクトンも採取できる。プランクトンはデジタル顕微鏡で観察でき、タブレットパソコンに映し出すことで鮮明な画像をグループで見ることができる。水中カメラで湖底の様子を船内のモニターに映し、生息する貝や魚、水草の様子をリアルタイムで知ることもできるようになった。タブレットパソコンの中にある図鑑ソフトにより調べ学習ができたり、専門家の説明を動画で見ることもできる。航海中に採水した水、採取したプランクトンや魚、貝など、その時その場の本物を調べる体験は「うみのこ」でしかできない学習であり感動体験でもある。さらに、LAN環境が整備され、タブレットパソコンを使って班交流した内容を全体発表の場で共有することもできるようになった。

 学習の場を工夫して設定することで、児童は興味関心をもって自分の課題解決のために必要な学習活動を選択し、観察したり、調べたりすることができる。児童が主体的に学習に取り組むために学習の場をデザインしていく先生の役割は大きい。

 最新の学習機器も活用した学習環境を整えることにより、児童は主体的に学習することができるようになっている。しかし、児童に、ただ「見てみましょう」「考えましょう」と言っても、どのように考えればいいのかわからず、単なる観察記録になっていることもある。学習で得た情報を分類したり、比較したり、さらに、生物の多様性、相互性、有限性といった関係について考えさせたりするためには、子どもの近くで学習を指導する先生の補助的な説明や言葉かけが大変重要になってくる。「琵琶湖の水の透き通り具合がよくなると、きれいだからよいかもしれないけれど、魚にとって本当に棲みやすいのかな。」「ヨシ帯が減ってきているのは、護岸の整備が進められたことのほかにも、水草が異常に増えていることも関係しているんだ。」など、問題解決のための答えは一つではないことに気付かせ、新たな課題を見つけさせる先生の言葉が、深く考えさせるための大切な手立てであると思う。そのためには、熱心に顕微鏡をのぞく児童のつぶやきに耳を傾け、書き出したメモをよく見て、適切な助言やアドバイスができる先生の役割が必要である。
(びわ湖フローティングスクール)