物語の始めって大切なんや
西 村 嘉 人

 一学期、二つ目の物語教材「一つの花」での学習のこと。
 「白いぼうし」の学習と同様に小グループでの話し合い学習を中心に進める計画を立て、学習に入る少し前から音読の家庭学習にも取り組ませた。
 ところが、いざ第一次感想を書かせてみると多くの子どもが、ゆみ子の「一つだけちょうだい」はわがままだととらえていることが分かった。
 仕方なく学習予定を変更して、第一場面だけを丁寧に読む学習を仕組むことにした。

「一の場面から分かることをグループで出し合ってごらん。」
の問いかけでグループでの学びに入った。
「戦争のはげしかったころっていつ頃かな。」
「明治?昭和?」
「先生は知ってる?」
の質問に、グループでの話し合いをストップして、子どもたちの曾祖父や曾祖母が子どもの頃、今から七十年以上前の時代が舞台であることを説明した。

「どんな暮らしぶりだったか、文章から見つけてごらん。」
の言葉かけでグループでの学習を再開した。
「チョコレートだのキャラメルだの…って、何にもないやん。」
「おやつどころではありませんでしたって書いてるから、おやつはないんや。」
「いつもおなかをすかしてるって書いてるから、食べ物がないんや。」
「ゆみ子は一つだけって言ってもらえるけど、お母さんは自分の分からあげてるから、お母さんはもっとおなかがすいてるんとちがうかなあ。」
「っていうことは、ゆみ子は一つだけって言っておかわりしてるけど、お母さんは本当に一つだけあげてるんやん。」
 子どもたちは、グループで話し合いながら、徐々に母親の愛情へ迫っていく。

 そろそろ潮時かと判断して学級全体での学びに切り替え、
「ゆみ子の一つだけとお母さんの一つだけの違いを考えよう。」と学習課題を提示した。
「ゆみ子は一つだけと言ったらもう一つもらえるから、一つだけという言葉を覚えた。」
「ゆみ子の一つだけはもっとちょうだいという意味だと思う。」
「小さいゆみ子は食べ物がないとか分からないから、もっとちょうだいと同じ意味で言ってると思う。」

 物語の冒頭を丁寧に読んだ子どもたちは、十年後のコスモスの意味を十分に味わうことができた。
(彦根市立稲枝西小)