新学習指導要領から考える〜国語科の「特質」とは何か〜
谷 口 映 介

 新学習指導要領が平成32年度から全面実施となる。今次の改訂では、「社会に開かれた教育課程」という基本理念、育成を目指す「資質・能力の3つの柱」 という学力論が示されている。これらの「3つの柱」の十全な育成を目指す観点として,「各教科等の特質に応じた『見方・考え方』」の明確化も求められ、内容編成や指導方法の在り方まで検討されている。資質・能力の育成に有効な教育方法の在り方についても、「アクティブ・ラーニング」を手がかりとして、「主体的・対話的で深い学び」としてその位置づけも明確になっている。

 今回、キーワードがいくつもあるのだが、核になるのは「教科の特質(本質)とは何か」ということである。教科の特質が明らかになれば、国語科の「見方・考え方」や「資質・能力」についても自然とつながってくると考える。滋賀大学教育学部附属小学校では、過去2年間、【附属小学校で育みたい資質・能力】として、次の7つを挙げている。国語科では特にBを重点として研究していた。
 @探究力 (主体性・課題設定力・計画実行 力・計画実行力)
 A情報収集力 (情報収集力・論理的思考力・批 判的思考力)
 Bコミュニケーション力 (言語運用力・対話力・傾聴力)
 C創造性 (感受性・発想力・表現力)
 D自律性 (自己調整力・自他理解力)
 E共生的な態度 (人間関係形成力・柔軟性・協調 性・非言語コミュニケーション)
 F内省的な思考

 国語科は、「適切に表現する」能力と「正しく理解する」能力を養う教科である。そこに言葉が介在することは言うまでもない。ただ、言葉の使い手自身がこれらの能力の高まりを客観的に判断することは難しい。そこで重要になるのが「他者との対話」である。対話を通してこそ、自身の学びや変容を客観的に見取ることが可能になり、言葉の使い手としての自己肯定感が高まるのである。自分だけではない。対話をした相手にとっても、「友だちの多様な捉え方」に触れ、文脈の中で適切に表現したり、新たに獲得した言葉や表現を効果的に活用したりする力を身につけることにもつながるのである。そうして、既存の自己の言語感覚を磨き更新することができる。こうした、他者との対話により言葉への認識や理解を深め、更新し、実生活において適切かつ正確な言語運用(活用)能力を養うことが国語科の特質であると言えよう。具体的な実践や評価方法について更に研究を深めたところである。
(滋賀大学教育学部附属小)