ひびきあい学びあい もう一度 学びの変容、その自覚
杉 澤 周 一

 来る春に実践現場を退く。弾んでいた子どもたちを思い浮かべつつ、30年あまりで得た実感から、やってみてはと本校やその他で話していることが幾らかある。
 特に「ひびきあい学びあい、もう一度やってみさせ、もう一度書かせ、ふりかえらせ、学びの変容、その自覚をもたせる。」を意図的に 実践してみてはどうだろうと。   学校の教室には、複数の児童がいて、教材・学習材があり、プロの教師がいる。その児童と教師の積み重ねもある。授業において、これを認識し大切にしてきた。
 4月、学級の児童に次のように話し「ひびきあい学びあい」の授業を通してみんなで伸びようと動機づけをした。「 教室は一人では なくみんながいて、自分の思い・考えと同じ、似た、違うものがあり、補い、変化、自信、安心などを得る。一人の学習では、できない。だから、みんなで自分の思い・考えを出し合い、自分に照らし、さらに広め深めよう。この学習を『ひびきあい学びあい』にと名付けよう。」

 この基本の学習活動は次の通り。最初の読みや発問について、必ず、自分の考え・思いをノートに書く。それをみんなで発表し合う。発表を聞いたり板書を見たりした中で自分に取り寄せたいものを色ペンでメモをする。それを参考に、考えを広め深めて、加筆修正、削除などをして、もう一度書く。さらに、もう一度、該当部分を読む。
 子どもたちに、その学年なりに学びのの変容、その自覚について説いた。自分で考え、複数でひびきあい学びあい、もう一度自分で考え、何らかの変容を自覚することこそ学習であると。

学びの変容、その自覚を意図した学習展開
[導入] 目標・課題 発問 方向づけ 学習の見通し 関心・意欲の喚起 モデル提示
  ↓
[自力学習] 読む 考える やってみる 探す 調べる 書く 体験 …
  ↓
[交流] 対話 話し合い 聞く 見る 比べる 気づく 新たな疑問 迷い 安心
  ↓
[もう一度、自分で] 読む 考える やってみる 探す 調べる 追体験
  もう一度書く リライト 直す 足す 削る 補う 変える まとめる
  ↓
[まとめ:学びの変容、その自覚] ノートや板書でふりかえる もう一度、読む(できれば、個々に黙読か微音読で) 自己評価 教師の評価 児童相互の評価 他からの評価
  ↓
[学びの変容、その自覚] できた わかった はじめよりできるようになった 増えた 減った 変わった 新しい疑問、意欲が湧いた …

 この展開は、1つの45分間全体の流れだけではなく、1つの主発問の数分の学習活動のうちに、あるいは、単元目標を達成する過程として1つの単元全体の流れにと、授業者が意図をもって進めることになる。
 こんなふうに実施していた。
○初発の感想文を書く→交流→もう一度書く(学年最初の物語で)
○気持ちの表れているところに線を引く→交流・板書→もう一度読んで引き直す(3箇所あるのに2箇所だった子は、ここで補える)
○読み取ったことを書く→交流→聞いたこと・板書から自分のノートに取り寄せ書き足す・書き直す
○主発問→個々にノートに書く→交流→もう一度個々にノートに書き足す直す削る変える…

 育つ実感を得たくて、自ずと「主体的・対話的で深い学び」のようなことをやってしまっていたのかもしれない。また、学習は個から集団、そして個に返すべきと思ってきた。個々を自立させてやりたいから。
(東近江市立八日市西小)