巻頭言
教育は言葉がけから始まる
神 田 英 昭

 「校長先生、来週もまた来てね。」
 毎週金曜日、一年生の子どもたちに読み聞かせをすることが日課になっている。本校では国語科を中心とした「言葉を大切にする学校づくり」に取り組んでいる。冒頭の取組はささやかながら私もその一助となりたいという思いで始めたことである。

 読み聞かせの前には、普段の観察から子どもどもたちの成長を伝え、後には、本の内容に関わることを宿題に出している。例えば、「おじいちゃんのごくらくごくらく」では、「ごくらくということばをみんなのおじいちゃんやおばあちゃんは言っているのか調べてきてね。」という具合である。次の日には、必ず何人かの子どもが、わたしにそっと教えてくれる。

 また、時間の許す限り教室を回り、子どもの学ぶ様子を参観し、そこから感じた子どもの成長や先生方の指導に対して感謝の言葉を伝えるよう努めている。

 このように、言葉を通して、温かい関係を築いていくことが私の務めだと思っている。これは、「教育は言葉がけから始まる」との想いからである。この想いに至ったのは、これまでの教師生活で経験した幾度もの失敗が糧となっている。ときには、子どもへの言葉がけが足りなかったことや言葉がけが偏ってしまったこと、また、ときには、厳しい言葉で子どもの心を傷つけてしまったことがあった。今でもそのことを思い出すと自身への悔しい思いと子どもへのすまない気持ちで胸が締め付ける。だからこそ、校長となった今、子どもたちや先生方へ元気出る言葉を届けたいと強く思う。また、言葉のもつ力を子どもたちに伝えたいと強く願う。

 今日も、「校長先生、明日もまたくるね。」と笑顔で帰って行く子どもの姿を見るにつけ、明日も温かい言葉で子どもを包み込もうと思う。「明日が待たれる学校」には、教師と子どもとの間にゆるぎない信頼関係があり、子ども同士の間には豊かな人間関係があるものだ。元気なあいさつと温かい言葉を子どもたちや先生方に届けるべく、今日も私は歩く。
(兵庫県加東市滝野東小学校校長)