巻頭言
今一度、教科の本質と授業づくりを
西 村 喜 雄

「深い学び」を明確にする「教科の本質」
 「深い学び」とは何か?この疑問に対しては、「習得・活用・探究のプロセスを通して、各教科等の『見方・考え方』を働かせ、より深く理解したり、創造したりすること」と示されています(平成30年度「学校教育の指針」滋賀県教育委員会)。ただ、これを実際の授業レベルで実現していくには、もっと誰もがイメージしやすいように具体化したり、エッセンスを抽出したりする必要があると思われます。そのためには「各教科等の本質」を描き出すことが、近道ではないでしょうか。算数科なら「(式や図で表すことの)すっきりさや鮮やかさ」に、社会科なら「社会の仕組みの巧みさや、社会で生きる人々の生き様」にせまることでしょう。国語科ならどのように描き出しておられますか?

「働き方改革」と「働きがい」の両立
 「めあて」と「ふりかえり」の時間を毎時間確保することなど、授業の形式のみに意識が向いていることが散見されますが、肝要なのは、授業者自身がその授業における「教科等の本質」を描き出し、子どもたちに「これだけは伝えたい」ことを明確にして授業に臨むことだと考えます。Plan→Do→Check→Action改めCAPDとも言われますが、私は、目の前にいる子どもを念頭に「こんな力をつけてあげたい」「こんな授業をしたい」という教師の願いや意志(Will)やデザイン(Design)を一番目に位置づけたいと思っています。
 一方、「働き方改革」は待ったなしの課題です。超過勤務の縮減をはじめ、各々の教員がワーク・ライフバランスを意識し、タイム・マネジメント能力を高めることが求められています。しかしながら、こんな時だからこそ、教師の「働きがい」に目を向けるべきではないでしょうか。「教科等の本質」を明らかにし、教師の願いや意志、デザインを生かした授業づくりこそ、大事なポイントが際立つことにより、実はコストパフォーマンスが高く、かつ、やりがいのある働き方につながると確信しています。
 私にとって、授業について仲間と語り合う時間は至福のひとときです。この楽しみを同僚をはじめ、より多くの先生方と分かちあいたいと願っています。
(滋賀大学教育学部附属小学校副校長)