一日の始まりは「コミュニケーションスピーチ」から
勝 矢 真 一 郎

 ここ数年、担任した学級で毎日続けている取り組みがある。「コミュニケーションスピーチ」である。コミュニケーションスピーチは、聞き手の反応や、話し手と聞き手の双方向のやりとりを重視した活動である。一般的な独話形式のスピーチではなく、話し手と聞き手が簡易的な会話のようなやりとりをしながら進めていく活動である。この活動を始めて、声が小さくて聞き取れない子や、緊張してスピーチをうまくできない子がずいぶん減ったように思う。次のようなことを意識しながら取り組んでいる。

(1) 話し手……聞き手の反応を引き出すための工夫をする。
 一方向から双方向への転換。反応の、ものさしとして「あいうえお」を示す。
 あ・・ああ  い・・いいね  う・・うん  え・・え?  お・・おお!
 以上のような反応を引き出すため、「問いかける」「写真を見せる」「クイズにする」「意図的指名をする」などの方法を共有する。このことにより聞き手から自然な反応が生まれ、会話をするような雰囲気でスピーチができるようになってくる。またスピーチ原稿に「ここでこんな反応を引き出したい」などの構想を書いたり、しめくくりの言葉を考えたりすることで、より大きな反応や拍手を引き出そうと工夫する子どもたちが増えてくる。

(2) 聞き手……「あいうえお」で反応してみる。素直に聞く。自然に聞く。
 人は本当に心動かされたり、楽しかったと感じたりしたときは、自然と反応が出たり、大きな拍手をしたりするものである。そのため、聞き手にはできるかぎり自然に振る舞うように指導している。このことにより、話し手も自分のスピーチが「うまくいったのかどうか」を判断したり、そこから新たな反応を得るために新しい工夫を考えたりするようになっていく。また、慣れるまでは反応の練習として、話し手と同様に「あいうえお」を示し、意識づけを行う。

 以上のように、話し方を工夫することで聞き手からたくさん反応を得たり、逆に友だちの言葉につぶさに反応しながら聞いたりする経験を積み重ねることで、子どもたちに自信や安心感が湧いてくる。クラスに共感的な雰囲気が生まれてくる。「伝わってよかった」「聞けてよかった」そんな子どもたちの笑顔から一日をスタートしたくて、日々コミュニケーションスピーチに取り組んでいる。
(甲賀市立伴谷東小)