共に生きる(第二の人生)
伊 庭 郁 夫

 4月から社会福祉法人「虹の会」の「大地」でお世話になり半年余りになる。一日の始まりは、目指す職員像と人権標語の唱和である。
 ○法人理念「共に生きる」に共感し、創造的に行動できる人
 ○温かさ・誠実さを大切にし、寄り添うことのできる人
 ○自分を磨き、専門性を高め、学び続ける人
 ○聞く・話す・伝える、コミュニケーションとチームワークを大切にする人
 ○いつも笑顔を絶やさず、心身共に健康である人
 日々、法人理念に立ち返り,気を引き締める。
「人権標語」
◎みんなで咲かそう心の笑顔
 これは、職員一人ひとりが考えた人権標語から互選で選ばれたものである。

 学校現場にいた頃は、聞く話すコミュニケーション力の育成に取り組もうと頭を使ってきたつもりであった。今の施設は、障がいの程度により一人一人の対応を求められる。自分の思いを言葉に乗せるのが遅かったり、難しかったりりすることが多い。

 今日は、いつもと様子が違うなと感じたときは、じっくりと時間をかけて、言葉を待つ。寄り添うことの大切さ、相手の立場に立つことの重要性を感じる。自分の余裕が必要である。そして、絞り出すように言葉を発せられた思いから利用者の状況を把握できたときは嬉しくほっとする。

 例えば、ある利用者が椅子に寄り掛かって泣きべそをかいている。
「どうしたの」
「おおごえ」「あやまて」「ほし」
「わかった。大声がいやなので謝ってほしいのやね」
途端に泣き声が小さくなる。

 また、ある利用者は言葉の不鮮明さをカードで補う。
「かごください」
「連絡帳をください」
等のマジックテープで取り外せるカードと懸命な音声で思いを伝えようとする。

 先日は、お楽しみの「奈良旅行」であった。「自治会」といって学校でいう「児童会」に似た組織があり、バスの中での司会やクイズ等の役割分担や練習原稿の確認をする。翌日には、早速「覚えてきました」というありがたい声。上手下手以上に意欲を大切にしたい。

 また、早口で同じことを繰り返し訴える利用者もいる。
「大地、帰るんか」
「大地、帰るんか」
 丁寧に言い直すように支援する。
「大地に帰るのですか」
それだけで、落ち着くこともある。日々、試行錯誤の連続である。