▼俳誌『花藻』の主宰交代のセレモニーがあった。新主宰は挨拶で、大役を引き受けることについてためらいがあったが、幼少の頃、祖母に教えられていた「恩送り」をする時と思いがんばるという決意を述べられた。印象に残る言葉であった。

▼「恩」は語源からみると、「因」と「心」から構成されていて、「因」には「わけ、もと、ちなみ」の意味があり、「心」が加わることで、原因を心に留めるという意味になるという。「恩送り」には親や先祖、人生の先輩から受けた恩をその人に返すのではなく、別の人や次の世代に返すという意味を持つ。だから、「恩返し」「恩に着る」「恩を売る」という言葉とは違った美しさを感じる言葉である。

▼映画『Pay It Forward』では、ある男の子が「世界を変えたいと思ったら何をする?」という問いに対して「親切にされたら3人の人に親切をする」計画を思いつき、やがて街中に”親切の連鎖”が広まるというストーリーになっているという。「恩送り」を理解するうえで分かりやすい話である。

▼教師になるまでに多くの人の恩を受けている。学級担任の時は、出会った子ども達や保護者・先輩や同僚に支えられてきた。それを恩とすれば、「恩送り」の機会は多い。意欲がでる。新しいことがやりたくなる。そして、やさしい自分になれそうな気がする。美しい言葉は、人を元気にする。(吉永幸司)