巻頭言
地域と学校の連携による防災教育の必要性
小 川 須 美 江

 2011年3月11日、東日本を襲った未曾有の大震災から6年が経つ。
 今年5月に、宮城県石巻市において、石巻ミーティング2017「東日本大震災からの復興とこれからの学校安全」と題する研究集会が開催された。地域と学校との連携を焦点に、学校における取組についての報告がなされた。

 災害時には、学校はその多くが避難場所としての役割を担う。数百名から数千名にも及ぶ避難者を受け入れねばならないのである。食糧の確保に加えて、当面の生活環境を整えることは容易なことではない。当時、避難所となった中学校の養護教諭は、避難者の健康管理や怪我人の手当、介護が必要な人に対しては24時間体制での見守りを続けたという。その後、看護師の助けを得ることはできたが、行政からの支援を受けるまでの4日間は、学校が主体となって動かざるを得なかったのである。まさに不眠不休の数日間であった。

 22年前の阪神・淡路大震災においても、行政からの支援の手が届くまでに少なからず時間を要 したと聞く。混乱のさなかにあって力を発揮したのは、避難者同士の協力と周辺地域からの支援であった。本研究集会の報告の中でも直接的な被害を受けなかった地区が「災害が起きたらご飯を炊け」と伝えられている不文律を守り、地震発生から約3時間後には、おにぎり・みそ汁・石油ストーブ・毛布等を学校に届けた。

 台風や地震等、災害の多い日本では「防災に対する意識」を持つことは不可欠である。文部省(当時)は1998年に『生きる力をはぐくむ防災教育の展開』を表しまた2001年には『生きる力を はぐくむ学校での安全教育』をまとめている(文部科学省)。併せて地域社会における防災教育の取組を重視し、「地域と学校との連携」の重要性も強調している。

 防災教育は被災地とその周辺地域において積極的に行われている。岩手県の全小中学校では「いわての復興副読本(いきる・かかわる・そなえる)」が配布され、主体的・協働的な教育活動を展開している。災害を恐れるのではなく災害と向き合い、たくましく生きる子どもを育てることが目標である。

 災害等について理解し防災への意識を高めることは、自らの安全の確保につながるだけではなく、他者や地域の安全にも役立つことを忘れてはならない。
(学習塾講師 )