巻頭言
言葉を学ぶ原点「音読と視写」
北 村 直 也

作文が書けるようになった
 1年生担任のS先生は新任の先生です。この1年間、授業づくりにとても苦労をされてきました。国語の授業でも教材や指導書を読み、先輩の先生方からアドバイスを受けながら授業をされていました。そのなかで、特に大切にされたのが「音読と視写」でした。
 3月8日5時間目の国語の時間です。「だってだってのおばあさん」(光村図書1年下)の最後の場面。ネコがおばあさんに「ケーキつくるのじょうず。」と質問します。「この後、ネコは何といっているのでしょう。」と、子どもたちに続けて書いてもらう授業です。子どもたちはズンズン書いていきます。10分間で全員が1ページ96文字を書き切り、さらに、2ページ、3ページと進む子が半数を超えました。中には4ページを超える子までいました。

先生の驚き
 S先生は、何が起こったのか、よく分からない顔で、しかし、感激して立ちつくしておられました。新任指導者として参観していた私は、「先生の1年間のご努力が、この子どもたちの姿ですね。最高のプレゼントを贈ってくれましたね。」とお話ししました。
 「音読や視写の力は、すごいんですね。言葉を子どもたちは、たくさん覚えてくれていたんですね。」と、S先生が実感を込めて話されたことが印象的でした。子どもの具体的な成長の姿から、音読や視写の大切さを学ばれたと思います。

日々のステップアップ授業の大切さと楽しさ
 研究授業(ジャンプアップ授業)の華やかさも大切です。緊張感のなか、子どもの力も先生の力もグンと伸びます。反面、子どもに力を少しずつ蓄えていく日々の授業(ステップアップ授業)は地味なものです。しかし、「語彙力と文法力」をしっかりつけていくために、とても大切な学習です。その具体が国語では音読と視写です。この音読と視写を古い指導法と一蹴される方もおられます。しかし、言葉を学ぶには一番効率がよく、効果ある指導法です。さらに、一番重要なのは子どもたちが、音読と視写が大好きであることです。体と頭を使い全力で取り組みます。
 すべての子どもたちが、S先生の学級の子どもたちのように、日々の授業で「言葉の力」をしっかりつけ、人生を力強く歩んでくれることを心より願っています。
(近畿教育実践のための教師塾事務局長 元大阪府寝屋川市立桜小学校校長 )