読み比べて、物語のもつ「深い意味」やよさを感じ取ろう
谷 口 映 介

「わらぐつの中の神様」(光村図書5年)を学習材に実践している。この単元でめざす子どもの姿は次の2点である。
〇物語のもつ味わいを語る視点(深イイポイント)を手がかりに、物語を読み味わい、根拠を明確にしながら作品のよさについて自分の考えをまとめる姿。
〇物語を読んで感じたことや考えたことを伝え合う中で、自分の考えを広げたり深めたりする姿。
 本単元では、「物語深イイシート」に今まで学習した読みの視点に沿って物語の味わいやよさを読書案内文として書きまとめる言語活動を位置付けた。物語そのものを味わいながらも、特色を分析的に捉え、作品のおもしろさがどのようなところあるのかを複数の叙述を取り上げて語り合う交流の場も設定した。これにより、一つの物語を多くの視点から読み解く力を身に付けることができるようにしたいと考えた。

【物語深イイシートとは】
 全文を1枚のシートにまとめたものを指す。読みの視点にそって線を引いたり、付箋に整理したりすることができるようにした。読みの際に大切にしたいのは、子ども自らが読む視点を見出すことである。導入で、「『物語を深く読む』とは、どんな読み方ができればいいかな」と問うと、次の視点が子ども達から出された。
◎登場人物の描かれ方
 ・人物の性格(人物像)を読む。
 ・人物の言葉や行動から、重要なキーワードを探して読む。
 ・人物の言葉や行動の意味を「なぜだろう?」と考えながら読む。
 ・中心人物の心が変わったところ(心情の変化)を読む。
◎物語の構成の工夫
 ・物語の構成の工夫を読む。
 ・題名の意味を読む。
 ・作者の意図(どんな気持ちやメッセージを物語に込めたのか)を考えて読む。
◎使われている言葉や表現
 ・「大造じいさんとガン」に出てきたような情景描写などが無いかを見つけて読む。
 ・文章表現の工夫を見つけて読む。

 これらは、年間の国語科の学習を通して繰り返し学習してきたことである。今までの学びを振り返りながら読みの視点を見出すことは、身に付いた力を自覚し、主体性を引き出すことにつながる。「わらぐつの中の神様」は、他にも、方言・比喩・擬態語・擬声語・色彩語など多くの表現の工夫が散りばめられている。これから読む中で、読みの視点を増やしていくことも今後の読みの力へとつながるであろう。学習の出口では、「ごんぎつね」や「モチモチの木」など、今まで学習した物語を新たな視点で読み、そのよさを語り合う場を設定する。読むことの新たな発見・喜びへとつなげたい。
(滋賀大学教育学部附属小)