巻頭言
読解の出会いと人生の岐路
関 弘 孝
 現任校教頭として五年目を迎え、途中教育委員会に四年間勤めたので、学級担任を離れ、九年が経ちます。今は、教頭として書写や図書を教えていますが、母校教育学部で「小学校教師を目指そう」と四年間積み上げてきましたので、頭の隅には学級担任としての気概を未だに持ち続けています。

 十年前まで、市内S台小で七年間勤め、途中二年間新学習システム教員を経験し、残り五年間を低学年・中学年を担任しました。  赴任した早々は、私の持ちネタの社会・総合でクラス経営をしていましたが、翌年システム教員として研究推進二名体制の一人として学校を牽引することになりました。学校では、研究推進のリーダーのもと、国語科での読解中心の授業研究を進めていました。
 システム二年目、中学校ブロック人権教育研究会をその学校で開くことになり、学級担任ではない私は、各担任の先生方の道徳の授業を見る機会に恵まれ、驚きの一言でした。若手からベテランまで、本当に授業の組み立てから発問・読み取りなど、相手の気持ちを考え、より深い読み取りができていました。この研究会を見て、日頃の国語の読解に使って、学級の仲間の絆を深めていこうと強く決意しました。

 翌年から、二年後の校内研究会を市内に公開することになり、その学校を離れるまで二回の公開研究発表会を開き、その時に講師としてお呼びしたのが吉永幸司先生でした。
 国語の読解力向上には、時代背景を考えながら、作者の思いや登場人物の胸の内を子どもたちと一緒に追求しながら、授業研究の発表をしました。
校内でまとめた「子どもたちにつけたい力」の系統表をもとに、各学年の先生も一緒になって、吉永先生の「読む・書く・話す」などを中心に読解力・表現力の向上を目指しました。その甲斐もあり、ある程度の評価を戴き、学級担任としての私も学級経営がとても上手くできたと自負しております。

 今後平成三十年からは、道徳科の教科書もでき、相手の気持ちを考えることがますます重要になる一方で、国語科の目指す方向性が時代変遷により変化することはやむを得ないと思うのと同時に、「相手の立場に立って考える」ことに変わりはありません。読解力の向上こそが、文字を通して相手の気持ちを読み取ることができると深く信じているところです。
 最後に、吉永先生との出会いがあるからこそ、今の私があり、感謝の気持ちで一杯です。
(全国公立学校教頭会副会長・宝塚市立中山五月台小学校教頭)