「聞く」ということ  きちんと「聞く」ということ
西 村 嘉 人

 急遽、1年生の国語の授業をすることになった。引きうけたプリントは1枚。自習でやらせてもよいのだが、それでは45分がもたない。
「これからこのプリントをしながら先生の話をよく聞く勉強をします。」
と、学習のめあてを伝えた。
「プリントをもらったら名前を書きましょう。」
これは指示通りにできた。
「名前が書けたら鉛筆を筆箱に片付けます。」
この指示に、子どもは納得できない。
「せんせい、プリントをするんだから鉛筆はいります。」
子どもたちからの反論である。
「よく先生の話を聞いて、考えが言えましたね。理由を説明します。」
「プリントには、文をよく読んで、問題に答えましょう、と書いています。これから文をみんなで 読みます。えんぴつを出しておくと邪魔ですから、筆箱に片付けます。よろしいか。」
納得した顔で子どもたちがえんぴつを手放す。しかし、ここからが大変。
「先生の言ったことがきちんとで きた人は15人だけです。もう 一度いいます。えんぴつを筆箱 に片付けます。」
2回目の指示でほとんどの子どもが筆箱にえんぴつを片付けられた。しかし、3人ほどが机の上に鉛筆を置いたままである。
「3回目です。鉛筆を筆箱に片付けます。」
気付いた近くの子どもが鉛筆を机に放置している子どもに教えた。ようやく全員の鉛筆が筆箱に片付いた。
「先生の話をよく聞く勉強ですから、話を聞いたらちゃんとその通りにすることが大事ですよ。」
と学習のねらいを再度確認して学習を進めた。
「鉛筆を1本出して、問題の1番の答えを書きましょう。」
「書けたら鉛筆を筆箱に片付けましょう。」
「答えが書けた人は手を挙げましょう。」
と、この指示で手が上がらない。
「鉛筆が片付いているから、みんなの手が挙がらないとおかしいです。もう一度言います。答えが書けた人は手を挙げましょう。」
2度目で全員の手が挙がった。
 少しずつ、わたしの意図していることがわかってきて、子どもたちがにこにこしながら動き出した。おかげでプリント1枚で45分間、学習ができた。めでたし、めでたし、である。
(彦根市立高宮小)