滋賀県の環境学習と言語活動 (2)
蜂 屋 正 雄

 ESDという言葉をご存知でしょうか。直訳すると「持続的な開発のための教育(Education for Sustainable Development)」という、個人的にはちょっと抵抗のある言葉になりますが、日本においては「持続可能な社会の担い手を育む教育」と紹介されます。(発展途上の国も含めた国際社会でこのような趣旨の教育を進めていくうえでは、納得の得られるネーミングなのかもしれません。)
 私は、地域の伝統行事の継承、環境保全と防災行政とのバランスなど、利害の違いを地域のつなが る力で共に乗り越えていこうということを目指す教育であるととらえています。

 このESDですが、ユネスコスクールを中心として実施されており、今年で10年目になります。そ して、この教育を国連で「ESDの10年」ということを提案したのは日本なのです。そして今年で10 年目。学校現場では定着しないまま10年が経とうとしていますが、この理念を元に進められていた事 業がこれまでもご紹介した「しが環境教育リーディング事業」です。
 環境教育を「自然環境」と狭くとらえず、社会や地域までも含めた環境ととらえ、3年間の取り組 みをされてきました。草津市は渋川小学校・笠縫東小学校・玉川中学校、近江八幡市は老蘇小学校・島小学校・八幡中学校、大津市は仰木小学校・逢坂小学校・志賀中学校、長浜市は富永小学校・高月 小学校・西浅井中学校。そして、それぞれの市と湖南農業高等学校・八幡工業高等学校・八日市南高等学校・米原高等学校が参加され、小中高等学校が連携する形で環境教育に取り組まれてきました。どの活動も地域の自然や歴史を学ぶ中で地域とつながり、思いを知り、学んだことを地域の他の人へ伝えていくという活動を進められてきました。

 ESDの紹介がほとんどになってしまいましたが、このように子どもたちが地域とつながるうえで、言葉の力ということが必須のものとなってきます。地域の方の思いを受信し、考え、まとめ、発信するという行為は言葉の力そのものです。本番をたくさん経験することによって、感じたことを伝えたくなる教育活動にしていければ、すべての教育活動が教室の中だけのものでなく、生きる力となっていくでしょう。琵琶湖博物館では地域がつながるお手伝いをしています。
(滋賀県立琵琶湖博物館)