巻頭言
山あいの村で育てる
中 川 絢 子

 「12年間の成長リレー」。
 運動会のプログラム名である。宝塚市の北部に位置する山あいの村で、元気で純朴に育 つこの子ども達がやがて村を出て社会人となる時、何事にも臆せず自立して生きていく力をつけたい。

 数年来隣接する西谷認定こども園・西谷中学校の全教職員が一堂に会し課題を共有するところから年度が始まる。
 その取り組みの一つとして学習・生活の手引きを作成。
 あいさつは目と目を合わせて。早寝早起き朝ごはん。毎日本を読む。靴を揃える。鉛筆を正しく持つ。等々。
 これといって特別なことは何もない。ただひたすらに、実践させていくことで、その先にある人間力の醸成と自立をめざすものである。

 一方、教師も、その資質向上は喫緊の課題だ。吉永幸司先生にご支援頂き、45分の授業でどんな力をつけさせるのかを明確にする意識が徐々にではあるができている。
 教師の放つ言葉が授業時間以外も含め大きな学習環境であることをお互いに戒め合うようになった。

 最近読んだ新聞記事。ワルだった少年時代の宮川大助氏が、情熱ある教師との出会いで人生を変えることができたと語っている。
 人生の転機になる出来事は誰にもある。しかし、小学校の教師が子どもの将来を切り開くキーマンになったという事実は素晴らしい。ワルだった大助さんが勉強がわかる楽しさを知り自分の能力を自分で開花させたこのエピソードを、私はその日のうちに話題にした。
 決して諦めない。子どもを育てることは自分が育つこと。子どもを教えることは教師が教えられること。全員参加での研究授業参観と指導案検討。議論百出。それでも、なお継続は力なりだ。

「12年間の成長リレー」では3歳から15歳までの西谷っこが次々とバトンを渡していく。村中の人々が歓声をあげ応援する。
 がんばれ!がんばれ!
 私も頑張る。
(宝塚市立西谷小学校長)