▼教材「『鳥獣戯画』を読む」(高畑勲・光村6年)に出会った時、理由は定かではないが、わくわくした気分になった。授業で子どもが変わるという予感もした。「ものの見方を広げよう」という単元名も心に残った。「はっけよいのこった。秋草の咲き乱れる野で、蛙と兎が相撲をとっている」から始まる書き出しも印象に残る。読み慣れると感動も希薄になる。が、初めて教科書を手にした時の感動は今も残っている。

▼「絵を読む」ということに軸をおいて教材を読むことを繰り返した。美術に疎いので作品を見ても読むことを考えてもいなかったので、読むにつとめた。「墨一色、抑揚のある線と濃淡だけ、のびのびと見事な筆運び。その気品」というわずか1行にも満たない文章が理解できない。だから、文章を読んだ。「絵を読む」にこだわった。

▼子ども達は文章を素直に読んだ。そして、文中にある「今度は君たちが考える番だ」や「『鳥獣戯画』は、だから、国宝であるだけでなく、人類の宝なのだ」について真剣に読もう、考えようとした。

▼時間をエネルギーにして絵を読むにつとめた。不思議な力が湧いてくる。ピカソ(泣く女)、葛飾北斎(神奈川沖浪裏)を読むことにつとめた。絵を読むことの幅広さ・奥行きが見えてきた。絵を読むことの楽しさが見えてきたこの頃。(吉永幸司)