難しい語句の意味を考える 「海をかっとばせ」
吉 永 幸 司

1.授業の概要
 教材「海をかっとばせ」(山下明生・光村3年)は、ワタルを主人公に、小学生の気持ちを代弁したような楽しい物語である。「ワタルは今年から野球チームに入った」「今はまだベンチせんもんだが」という文章に共感する子も多い。
 音読を手がかりにしながら、内容の大体を理解させたり、自分と比べたりして読ませ、物語の全体像を理解させた。その後、次の発問をした。
「もっとくわしく読みたい場面はどこですか。」
 好きな場面を選ぶことを目的とした発問である。多くの子が選んだのが、「ワタルのバットがビュンとうなった」から始まる場面であった。

2.読みたい場面をくわしく読む
 ホームラン、逆転、ダイヤモンドを一周する等の語句が散りばめられた文章は心が躍る。本当に意味を理解して読んでいるのかどうかを確かめるべく、「難しい語句に印をつける」ことを指示した。そして、発表。
「手ごたえがわかりません。」
「空のかなたがわかりません。」
「どよめくがわかりません。」
と、競うように出た「わかりません」に教室は盛り上がった。この他にも、「かるがる・ダイヤモンド・むねをはる」等。大体は理解しているよう思うが、本当は知らない実態が浮かび上がった。「会心の手ごたえ」の「会心」を除いて、意味を確かにした。

3、全員正解で意欲を高める
 難語句の意味を理解できた段階で「会心」を提示した。意味を理解している子もいたが、あえて発表させず、次の3つを提示し選択をさせた。選択するためにその根拠を明らかにするという仕掛けをするのが目的であった。選択肢は、
 @うれしい Aかなしい Bつまらない
 全員が@を選択した。全員が同じ答えになったのがよかった。
・ワタルがホームランを打った。うれしいのは当然である。
・手ごたえがあったから、いい気分であり、ABは当たらない。
等であった。意見が出た後、本当に「うれしい」でいいのかどうかを辞典で確かめた。
 辞典では、「期待通りにいって満足すること」と示していた。内容から充分に理解できる意味であった。何よりもよかったのは、分からないと最初から考えようとしなかった子が、選択した答えが正解であることで意欲を持った事である。3つの選択肢のうち正解らしきものが1つ、後の2つは確実に間違っているという仕掛けの効果であった。
(京都女子大学)