第18回「新しい国語実践」の研究会北海道大会で考えた「読書」 
森 邦 博

新しい国語実践の研究会北海道大会(7月28日・29日)では、私は「読むこと3」の分科会のアドバイザーを務めた。
 学習指導要領、国語、「読むこと」の目標には、「読む能力を身に付け させること」「読む態度を育てること」とが、「とともに」で結ばれて示されている。「読むこと」の能力育成と態度育成とが同時に総合的に求められている。読めた(内容理解・読解技能はついた)が、読まない(読書の態度は育っていない)指導過程を改善するということであろう。

 提案「ブックポスターとごんぎつね劇場」(札幌市立栄緑小、吉田聡子先生)では、新美南吉作品の読み聞かせ(おじいさんのランプ、でんでんむしのかなしみ、いぼ、きつねなど)による「並行読書」が取り組まれ、子どもたちの中には「感情や世界観、時代意識のすれ違いによるおかしみとその背景にある哀情」を感じていたのであろう。「ごんぎつね」の終末場面で「先生、本当に悲哀だね」と感想を漏らした子どもがいたとの報告であった。中学年では「幅広い読書」が目標であるが、複数の作品に共通テーマのようなものを感じ取る読書の態度の育ちの芽を見つけることが出来たのだった。

 提案「個の読書から共同体の読書へ」(青森県西目屋小、庭田瑞穂先生)では、読書育てたいことを低学年(感想)中学年(感想+紹介)と焦点化し、それを踏まえて高学年では「推薦」へと発展させようという指導意図での実践であった。全学年で自由読書がベースになっており、地域・家庭ぐるみの読書推進の取り組みと連携しているとのことであった。
 平成16年文化審議会答申では国語力を身に付けるために読書の在り方について「子供ばかりではなく全年代にわたって、ある程度の割合で『全く本を読まない人』が存在する」と「読書離れ」を危惧し、「子どもの読書の態度の形成には学校ぐるみ、家庭・地域ぐるみの実践の発想が必要」と提言されていた。庭場先生も「西目屋小の読書推進を村あげてサポートしていただいている」と報告された。

 提案「古典文学を紹介し合う」(群馬県川西小、岩間昌夫先生)の実践では、古典になじみのなっかた子どもたちの中から「先生古典っておもしろい、かっこいい」という声が聞こえるようになったとの報告があった。古典文学は何故残ってきたか、それは「いつの時代にも通じる面白さ」が繰り返し再発見されてきたからであることを考えると、まさに正鵠を射た感想なのだろう。

 「読書このよきもの」との思いがこれらの実践報告から滲み出ていた。
 願わくば、すべての子供も大人もが「今読んでいる本はこれ、次読みたい本は…」と語れる環境づくりを願いたい。
(滋賀県教育会)