保護者の来校から
北 島 雅 晴

「北島先生、鈴木(仮名)ですが、覚えていらっしゃいますか。」
 参観日に保護者が職員室に訪ねて来られた。現在の面影からは、判断できなかったのだが、名前を聞いて30年前に1・2年生を担任した鈴木さんということが分かった。現在はお母さんとなり、本校の学区に住んでおられる。
「鈴木さんの近くに、高木さんがいたよね。足が速かったね。」
「高木さんは、結婚して横浜に住んでいます。」
といった話をしながら、当時を懐かしんだ。
 その中で、詩をよく書いたこと、文集を今でも残していることを鈴木さんが話してくださった。詩をたくさん書かせていたことは、忘れてしまっていたので、(そんなこともあったかな)と思い出しながら話を伺っていた。

 自宅に帰り、当時(2年生)の文集に目を通してみた。製本した文集で題名が「てるてるぼうず」。私が子どものノートを見た時にてるてるぼうずをサインとして使っていたので、それを文集の題名にしていた。鈴木さんの作品(日記)が、7月16日号にのっていた。


「パン1まいでいぶくろがふくらむのか、おとうさんは」

 思わず笑ってしまうような長くてユニークな題名である。

◆おとうさんは、パンをたべるとき、口にたくさんパンをいれます。大きな口をあけてたべます。一まいのパンだけでたりています。おとうさんのいぶくろは、わたしよりずっとずっと大きいです。わたしのいぶくろとおとうさんのいぶくろをくらべると、おとうさんのいぶくろが大きいのに、一まいのパンでたりるとは、おもいません。

 鈴木さんは、どちらかといえば口数の少ない子で、どんなこともきちんとしなければ気が済まないという性格だった。文章も硬いものが多かったが、この作品はのびのびと書いているなあと感じながら読み返していた。

 鈴木さんの作品ではないが、当時の詩を一つだけ紹介する。


  しずくのそら
 しずくは
 とっても おくびょうで
 おめかしがだいすき
 しずかに かみさまが
 みずいろのしずくをおとしたから
 そらができたんだよ


 30年前、自由にのびのびと文章を書かせていた。鈴木さんのような作品が生まれるような指導に心がけていきたい。
(草津市立志津小)