[特別寄稿]
算数科の言語活動(5年)
細川 寿樹

 算数科の言語活動は、と問われたら3つのことを思い浮かべる。

 1つは授業中の規則やルール、また集中力を意識していることである。丁寧語(特に文末)を意識して答え発表させる。自分の考えや答えが教室の誰にも伝わるような声で発表をさせる。丁寧にノートにまとめるとういことを大事にしている。これらは特に算数科と関連がないように見えるし国語科で育てる内容であると思っている。
 しかし、算数科は、思考力を育て、問題や数式を解いて完結することだけではない。丁寧に筋道を立てて考えることは、言語の力である。考えを整理するのも、伝えるのも、基本をたどれば、規則、ルール、集中力である。言語の力を育てないと算数の面白さは獲得できないという考えがある。

 2つ目は、学習習慣である。算数を学ぶ楽しさは、答えを見つけることと子ども達は考えている。正解と不正解が明確に分かる。計算に関わる力は、毎日の繰り返しが大切である。また、複雑な問題を解くには条件を整理する過程が重視される。これらのことを授業という場だけで育てるにはかなりの制約がある。そのために、基礎、応用、発展の繰り返しを習慣づけるようにしている。授業では、基礎段階では一斉学習で考え方や学習力の育成に重点をおく。次に基礎として学んだことを応用する力を視野にいれた指導をする。共同思考が軸になる。発展の筋道をたどらせ論理の構築を指導している。

 このような筋道の過程で導入したのが、音読、暗唱である。2年生で、九九の意味や仕組みを理解をさせた後、全員にかけ算の九九を覚えさせる。声を張り上げ繰り返しながら、子どもたちは九九を覚える。これを真似たのが、理解した公式や、簡単な数式等の音読と暗唱である。効果があったのは直径×円周率の暗唱で、全校理数音読会の定番になっている。「4×3.14=12.56、6×3.14=18.84、…」など音読をさせる。算数が苦手になっていく子の中に、計算間違いがある。円周は「直径×3.14」は知っている。式は正しい。途中の計算間違いで不正解になっている。計算の間違いを乗り越える力は育っていない。その結果。算数嫌いになっている子に、覚えさせたころ、間違いが少なくなり、その後算数の力が伸びたという子から学んだことである。日常的に国語科で音読を繰り返している。おそらく、古典などは読んでいても意味が分からないことも多いだろう。それでも、音読が大好きな子どもたちである。国語科のの音読から得た理数音読の知恵である。

 3つ目は週末の「算数学習の振り返り」である。課題は、1週間学習をしたことをまとめさせる。そのためには、学習ノートを振り返ることを条件にしている。ノートに思考の記録を丁寧に書き残すことが日頃の算数授業の約束なので、振り返りの材料はある。それをレポート風にまとめるさせる。まとめ方に個性が出てくる。

◆今週は「余りの出し方」と「商の大きさ」の2つの学習をしました。まず、余りの出し方です。筆算は小数と同じようにしました。違いが出てくるのはこれからです。…(学習過程のまとめ型)
◆小数÷小数を筆算でしなくてもできる方法が分かりました。とても便利で活用できました。僕が見つけた方法は…(探求型)
◆体積は容積、内のりの学習で、石の体積を中心に勉強をしました。(図を示し)内のりを引かないとただの体積になってしまうことに気づきました。(解説型)

 教科書や問題集を解くことで完結し満足する子から、学習を整理し成果を確かめるために書く時間を確保した。これを、算数における言語活動と位置づけた結果、正解不正解を話題にする子から考えることを大事にする子が増えてきた。
(京都女子大学附属小学校)