巻頭言
表現の仕方からみた国語と算数
酒 井 道 太
「中学数学で覚えていることは?」と聞かれたら、何と答えますか。ある人は「連立方程式だ」というでしょう。あるいは「三平方の定理」という人もいるかもしれません。 では、「証明問題」はどうですか。だれもが出会い、学習した証明問題。中には苦戦した人もいるかも知れません。 さて、ここで問題です。次の問題をどう解きますか。
算数(数学)では、次のようになります〔証明@〕。 四角形ABCDが平行四辺形だから AB=DC=CD・・・@ AB‖DCより ∠ABO=∠CDO・・・A また、∠BAO=∠DCO・・・B @、A、Bより、一辺とその両端角が等しいから △AOB≡△COD 国語なら、次のようになるでしょうか〔証明A〕。 まず、四角形ABCDが平行四辺形だから、辺ABと辺DCの長さは等しい。 次に、辺ABと辺DCは平行だから、錯角は等しいので角ABOと角CDOの大きさは等しい。 同様に、角BAOと角DCOの大きさも等しい。 これらのことから、三角形AOBと三角形CODは、それぞれ一辺とその両端角が等しいので、三角形 AOBと三角形CODは合同である。 「書く」解答としては証明@がシンプルでわかりやすいです。算数・数学ではいかにすっきりしているかが大切だからです。ですが、「聞く・話す」解答としては証明Aがわかりやすいでしょう。 国語では「適切に表現し正確に理解する能力を育成し、伝え合う力」を育成することが大切と言われます。一方、算数でも「見通しをもち筋道を立てて考え、表現する能力」を育てることが求められています。 前述の証明でもわかるように、その表現一つをとっても国語、算数のどちらかだけでよいというのではないと言えます。 その目的や意図、場面や状況によって適切に表現できる力をつけるという点において、互いに補完し合うものと捉えたらどうでしょうか。 (大阪府追手門学院小学校教諭)
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