第28回「新しい国語授業」研究会
読書教材について
三 上 昌 男

 一つの文学教材の読みをきっかけに、関連するジャンルやテーマの本へと読み広げる教材(単元)がある。読んだ本について伝え合う読書活動を行う展開までがひとまとまりとなっている。

 1年「いろいろなおはなしをよもう『おとうとねずみチロ』」(東京書籍下巻)の学習では、場面の様子を想像しながら「おとうとねずみチロ」を読み、さらにいろいろな物語へと読み広げることをねらいとしている。
 チロの様子を思い浮かべながら読むために、チロになったつもりでチロの言葉を声に出して読む活動が、「てびき」に示されている。教室における音読が楽しい学習として展開されてこそ、いろいろなお話を読もうとする意欲を喚起できることになると考えられる。
 自分のチョッキも編んでほしいという思いから、丘の上の木に登り「おばあちゃん」と呼んだことにより山びこを体験し、おばあちゃんに声を届けるため、「ぼくは、チロだよう。」「ぼくにも、チョッキ、あんでね。」と叫ぶ場面がある。
 この場面、山びこを音読で体感的に理解できるものと考え、グループ音読に取り組ませてみたい。「チロ、山びこ1、山びこ2、山びこ3・・・」という役割を決め、チロの声が、「くりかえし、ひびきながら、だんだん だんだん とおくなって」いくことを音読を通して読み味わわせたい。それは、自ずとチロの気持ちを考えることにつながっていく。

 3年「世界の民話を読もう『木かげにごろり』」(東京書籍下巻)の学習では、世界の民話を読んで、民話のおもしろさを味わうことをねらいとしている。  世界の民話の一つとして、朝鮮半島に伝わる「木かげにごろり」を民話のおもしろさに注意して読み取り、おもしろさについて話し合うことが大事な学習となる。この「おもしろさ」とは何か。個々の感じ方を大事にしながらも、民話のおもしろさを見つける観点を学ばせることが指導のポイントである。
 話の展開(ストーリー)のおもしろさ、登場人物の言葉や行動のおもしろさ、民話独特の言い回しや言葉遣いのおもしろさなど、いくつかの観点を「木かげにごろり」に見いだすことができる。子どもたちは、個々に見つけたおもしろさを交流することで、おもしろさについての読みを広げたり深めたりできるであろう。
 この学習をふまえ、民話のおもしろさを読む視点を持って、世界の民話を読み比べ、共通するおもしろさや独特のおもしろさに気付くことができるのである。
(近江八幡市立桐原東小)