読み聞かせの技術  〜拠点校指導研修より〜
高 野 靖 人

 小学校において、読書活動はすっかり市民権を得た。「朝の十分間読書」などを日課に位置づけている学校も多い。本務校では、子どもたちは本袋(布製の手提げ袋)を机の横にかけ、2、3冊の本を入れている。朝読書だけでなく、テストを書き終わった後など、すきまの時間にも、席を立たずに読書ができるための、共通実践である。また十数年前には、先進的な取り組みとして注目された、保護者ボランティアによる読み聞かせも、多くの学校で実施されている。

こうした環境の中で初めて教師をする初任者、読書指導への意欲に関して、個人差が大きいように思う。極端なことを言えば、担任として何もしなくても、朝読書は日課の中に位置付いているため継続されるし、定期的にボランティアによる読み聞かせも教室で行われている。毎週、絵本を選んで、教室での読み聞かせを続けている初任者もいるが、4月からの半年間、一度も読み聞かせをしていない低学年の担任がいるのも事実である。

 そこで、「読み聞かせの技術」という研修を行った。まず、レジュメを渡す前に、用意した絵本を手渡して、「教室で、学級の子どもたちに読み聞かせを行うように、私に向かって、その絵本を読んで下さい」と課題を与える。下読みなど、準備のために5分間程度与える。
今回の絵本は、「おまえ うまそうだな」(作絵宮西達也・ポプラ社)。初読の初任者もいた。
5分後、少し照れくさそうに、私1人に向けて読み聞かせを始める。だいたい絵本を半分読んだあたりで、ストップをかけ、資料も配って研修を始める。

指導のポイントは、
・表紙、見返しなど丁寧に見せて題、作者など書かれた文字を読んでから、本文に入っているか。
・絵の見せ方、ページのめくり方・擬音語、擬態語が絵の中に書かれている場合の扱い方など。
資料には、「読み聞かせにむく絵本の選び方」「読み聞かせ後、感想聞き魔、説明魔、質問魔にならないこと」なども示されている。

 拠点校指導として実施した4人の初任者は、ほとんど読み聞かせをしていない者も含めて、絵本の持ち方・見せ方・ページのめくり方などは上手だった。ボランティアによる読み聞かせの姿などに普段から接している成課だろう。本文を読む声にもさほど違いはなかったのだが、間の持ち方や擬音語と絵のコラボレーションを意識して読み進めるかによって、臨場感には大きな差が感じられた。
 そうした差を埋めるように研修をしたつもりだが、実践につなげてくれるだろうか。なにしろ、担任による読み聞かせは、子どもにとって格別なものなのだから。
(大津市立仰木の里東小)