巻頭言
人間力の育成
坂 神 照 雄

 平成23年度、本校の現職研修の講師としてご縁があって吉永幸司先生をお迎えすることができました。本校は過去数年間、国語科指導の研究実践を進めてまいりましたが、本年度については1年間、愛知県の事業である「ことばの学習活性化推進事業」の委嘱を受け、国語科を中心に言語活動の一層の充実を目指してきました。
 吉永先生には京都からの遠路にも関わらず、3回(6月、9月、12月)の公開授業研究にお越しいただき、国語科指導の理念や実際の授業の進め方など、詳しくご指導をいただくことができました。特に6月の「国語力は人間力」という指導理念についてのお話は、目からうろこが落ちる心境で感銘を受けました。

○児童のていねいな取組み
 国語科授業で習得したことが日常に生かされ、指導と子どもたちの日常が一体化してこそ、本物の国語教育と言えるのだと痛感させられました。例えば、授業中に児童が語尾を「です」「ます」でていねいに話したり、友達の名前に「さん」付けをして呼んだり、ノートにていねいに書きこんだりすることは、落ち着いた生活態度の修練につながると思います。ていねいに話すために語彙を選んで相手に分かりやすく話すことができたり、名前のさん付けで、相手を敬う気持ちが持てたり、字をていねいに書いて誤字が少なくなったりする波及効果が実際本校でも現れています。

○児童の自立した国語力に
 吉永先生からは、三度のご講演を通じて多くのことをご指導いただきました。「耕し読み」「5分で自分の考えをノートに書く力」「意見交流による読みの深化」「手引きにそった指導」「暗記するぐらいの音読」「並行読書の励行」「自分の学習成果を自分の言葉で語らせる」など、指導の大切なキーワードを教えていただきました。これらの指導の一つひとつを通して、子どもたちは言語技能を高め、分かる楽しさを実感していきます。そうすると、自分が選んだ本を自分で批評し、意見が述べられたり、俳句、詩、物語などで自分の感性を豊かなものにするまでの自立した学びに行き着けると思います。まさに習得から活用へのステップアップです。

 本校の実践がこうあることを願い、小学校6年間を計画的に着実に指導し、子ども自身が自分の使う言語に責任を持とうとする意識化まで高められればと思っています。
(愛知県新城市立東陽小学校長)