並行読書が生きる
廣 瀬 久 忠

 「学校図書館の有効な活用方法に関する調査研究」の協力校として、校内研究で実践を深めている。
 学校図書館の読書センター機能の活用が、子どもの生活と本とのつながりを強くするために必要である。
 毎朝の帯活動としての「朝の読書」は、1日の始まりを静かな環境ではじめ、学習の準備状況を整えていく大切な時間として定着している。担任の読み聞かせ、担任交代の読み聞かせ、図書ボランティアの読み聞かせも子どもに大変好評である。
 学校図書館には、研究協力校の恩恵として週4日、毎日4時間、図書支援員が配置されている。子どもが学校図書館を利用するときには担任か図書支援員がいることの意義は大きい。図書の借り出しだけでなく、子どもの相談にのることができる。

 一方、本校の教師たちが大切に考えてきたのは、学習情報センター機能の活用である。
 これまでからもさまざまな図書や資料を「比べ読み」したり、教科書での学習の発展として、読んだり調べたりする「発展読書」の取り組みはあった。
 しかし、教科書教材を読むとき、物語を豊かに読んだり、説明文を正しく読んだりするために「並行読書」が活かせないかという取り組みを始めている。読書で得た関連情報をつなぎながら読解指導を充実させる取り組みである。

 例を挙げると、説明文「もうどう犬の訓練」(東書4年)に、
「もうどう犬になるための訓練は、犬が一さいになると始まります」という1文がある。
 盲導犬の訓練であるから1歳以降の訓練について書かれているのが当然であり、子どもは「1歳になって初めは人間の言うことに従う訓練がはじまるんだな」と読む。しかし、「並行読書」を導入すると、教科書には書かれていない、1歳までに注目する子どもが現れる。
「盲導犬は生まれたときから訓練が始まるのではなくて、1歳までは、パピーウォーカーと呼ばれる人が『人間と仲良くなり、人間の言うことを聞くとほめられる関係を作る』と『今日からあなたの盲導犬』に書いていました」の発言が生まれてきた。突然訓練が始められるように読んでしまう子どもは、犬と人間の信頼関係を築く1年間が存在することを意識するようになる。結果として読み流しが少なくなり、ことばへの着目が多くなり、叙述の正しい読みにつながると考えている。また、 「訓練をする人は…英語で命令を出します」のところで「『盲導犬アンドリューの一日』に書かれていましたが、同じ意味を表す日本語の指示では犬が混乱する。犬への指示がぶれないように短い英語ではっきり命令すると書かれていました」と発言し、周囲の子どもたちがなるほどと納得し、「だから、英語なんだ」と読みを確かにしていく。

 物語文「木かげにごろり」(東書3年)では、木の影がどんどん伸びていくおもしろさとおひゃくしょうのとんちのおもしろさを楽しみながら読んでく。「かげの長さが伸びていくのは太陽高度が低くなっているからだ」と理科の本から得た情報をもとに発言した子がいた。働き者のおひゃくしょうは毎日毎日の仕事の中で影の長さが変化していくことを知っていたが、地主は木のそばに居続けていたから気づかなかった。だからおひゃくしょうのとんちが効く楽しさがあることを豊かに読むことができたのである。

 この1年、教師たちは試行錯誤しながらも「並行読書」を共通理解し、授業中の子どもの発言にその手応えを体感してきた。  学年の複数クラスが共有できるように教室の前の廊下に学習中の単元の関連図書が並ぶようになった。並べ方にも教師に工夫がある。前を通る他の学年の教師も足を止め、背表紙や表紙を眺めている。どんな学習をしているのかが職員室の話題になる。単元にあった選書規準のコツをつかむと子どもの手応えと笑顔が浮かんでくる。
(湖南市立菩提寺北小)