読むことで学習力を育てる 「ごんぎつね」(4年)
吉 永 幸 司

 物語を全体として読む。

1 子どもに育てたい力は学習力である
 「こんぎつね」を勉強してごんの悲しさや、兵十と心の距離が楽しかったという読みがある。これは、「ごんぎつね」を教材としないと得られない学習内容である。そのためには緻密な文章の読みが大事になる。しかし、学習活動に軸足を置き、物語の読み方や感想の持ち方を学習内容とする。
 子どもに育てたい力は、学習を自らの力で進めていけば、楽しいと言える学習力である。少し、大胆に、「ごんぎつね」を子どもたちに読ませてみたい。

2 「すらすら読める、だいたい分かる」を大事にする
 教材解釈に多くの時間をかけると、読むことが粗くなる。その結果、音読は家庭学習になる、学習活動の格差は広がる。全文を通読することは数回で、後は、場面ごとの音読ではすらすら読める力は育たない。音読を繰り返すことにより、内容の大体が理解できると考えてみたい。そうすれば全体を読む力が育つ。大体を理解した力から、学習の手引きや友達の話し合いから内容を深める。

3 語彙を広げ、文章の機微に触れる読みを繰り返す
 思考力を育てることが求められる時代になっても、指示の繰り返し授業が続いている。文章の縦割り読解で、どのような力が育っているのかということについても疑問を持たない子が育っている。「初めて読んだときはおもしろかったのに、読むたびごとにおもしろくなくなる」ことへの疑問を持たない子になっている。その平板さを乗り越えるのは、語彙に関心を持たせることである。通読を繰り返す過程で、学習の手引きが一人でできる力を育ててる方法は、従来のような画一的な話し合いの授業ではない。

4 学習指導計画を大体に見直す
 「これは、わたしが小さいときに、村の茂平というおじいさんから聞いたお話です」から始まる「ごんぎつね」は、「わたし」が聞いた話である。時は、昔、所は、中山。中山から少しはなれた山の中に「ごんぎつね」というきつねが住んでいた。そのある秋のことの話という設定である。その話の全体を理解させるという計画を立てる。詳しく読みたいところを繰り返し読む。好きなところを音読するなど、その都度、読みたい部分を大事にした指導を置く。次に「学習の手引き」学習。最後に、山場を丁寧に読むように構成をした。指導のポイントを明確にして、緊張して文章を読む学習を繰り返す過程で育つ力を大事にしたいのである。
(京都女子大学)