教材研究の実際 〜拠点校指導教員として〜
高 野 靖 人

 初任者研修の拠点校指導員として、最近実施した別室研修の一端を紹介したい。
「教材研究の実際」と題した授業研修をたっぷり2時間かけて行った。「教材研究の意義や方法」については、4月当初に行っており、授業を参観した後の講評においても、度々言及している。事前の教材研究が大切なことは初任者も自覚しているのだが、日々の忙しさにかまけて、教科書会社の指導書頼りという姿も見られる。授業を参観していて、教卓に広げた指導書に時々目をやる初任者を見て、事後に注意したこともあった。せめて、授業に関する資料は事前に目を通し、消化して授業に臨むことを指導しているのだが。

 今回は、指導書などの資料を使わず、児童の教科書のみ使って、じっくり考えさせた。次の三段階で読み解かせた。
(1) 個人の眼で(教師という立場を考えずに、素直に文章研究をし、感想を持つ)
(2) 子どもの眼で(学級の子どもたちは、この教材に出会い、どんな思いを持つか想像する)
(3) 教師の眼で(実際に授業を行うことを想定し、現時点での簡単な授業構想を書く)
 (1)(2)に関するメモと(3)の授業構想が書ける用紙と国語の教科書を渡し、研修の趣旨を説明した後は、初任者1人の作業となる。

 選んだ教材は、2年生「かくれんぼ」(光村下)、3年生「かるた」(光村下)、それぞれ3学期すぐの教材だが、文学教材のように親しまれてはいない。思った通り、4名の初任者全員、今回初めてこの教材を読むという白紙の状態で、スタートできた。
 短い初任者で20分程度、一番長い者で1時間以上、1人で集中して教材を読み、用紙に記述していた。私は、席を離れていた。

 「できました」という初任者の声で研修再開。感想と授業構想を説明させ、アドバイスをした。特に、教材の特徴やそれに伴う指導内容について、初任者の気付きに応じて、ポイントを指摘した。
 最後に、インターネットで公開されている指導案や指導事例を、参考にとプレゼントした。

 なお、初任者の授業構想だが、3名は指導計画風に各次または時間ごとの主な学習活動を書いてまとめていた。1時間以上かけて書いていた1名は、各時間ごとの「児童の活動内容」と「予想される児童の発言・考え」を表にして詳しく書いていた(一枚で書ききれず、追加の用紙を渡した)。教材の部分的な要約も書かれ、充実していた。といって、全員にこうした記述を要求するわけではない。あくまで、構想が持てればいいのである。
(大津市立仰木の里東小)