人柄や気持ちを読む 「モチモチの木」(3年)
吉 永 幸 司

1.人柄や気持ちを読む
 人柄や気持ちを読むことは、国語の授業で育てる大事な仕事である。なぜなら、物語が楽しいのは、登場人物が出来事を通して変容するからである。特に、転換の場面では、人柄や気持ちを読む力の働きは大きい。その働きに導くのが発問である。

2.「モチモチの木」の発問
じさまの急病を知って、豆太は「医者様をよばなくちゃ」と言って走り出す。この場面における発問を次のように考えて授業を進めた。
  発問@ 豆太の行動を表す文を見つけましょう。
  発問A 見つけた文から豆太の気持ちを想像しましょう。
 発問@は、豆太の行動を表す文から読み取るという活動を通して、緻密に正確に読む力を育てることを意図した。
 発問Aは、一般的な考えでなく、限られた条件の中で、気持ちを推測することが大事であることを理解させようとしたものである。
 この二つの力が育つと「気持ちを考えましょう」という発問が通じる。

3.豆太の人柄や気持ち
 授業は「豆太の人柄や気持ちを読み取ろう」という目標で始めた。
行動を表す文として、次のことを見つけ、共通理解をする話し合いをさせた。
 o豆太は、走り出した。
 o豆太は、走った。
 豆太が医者様のところへ行くまでの行動を表す文はこの「走った」である。その行動を説明する言葉が加わると人柄や様子が浮かびあがってくる。
 o豆太は表戸を体でぶっとばし  て走り出した。
 o豆太はなきなき走った。
 文には、明確に出ていないが、次の文も主語を補うことができる。
 o(豆太は)ねまきのまんま走った。
 o(豆太は)はだしで走った。
 o(豆太は)ふもとの村まで走った。  板書を読ませ、豆太の行動から気持ちを考えさせた。
 「走っていく時の気持ちは書いていないけれど、気持ちを言葉で表せるね。それを想像するというのです」と補足をしてグループの話し合いへ活動を移した。
 人柄や気持ちは固定しているものではない。そこには条件がある。その条件を整理するのが、主語と述語を意識させることである。豆太が弱虫であることを知っているから「走った」が生きるのである。
(京都女子大学)