巻頭言
輝く笑顔に、感謝
金 杉 恵 子

 仏教の教えの中に「和顔施(わがんせ)」という言葉がある。「笑顔は人の心を和ませる最高の贈り物である」といったような意味で、私の大好きな言葉の一つである。
 仏教精神を建学の志とする京女大附属小で私は三十八年間勤めた。子どもたちの輝く笑顔に喜び、励まされ支えられ育てられた。今は大きな感謝の心でいっぱいである。
 五月から二ヶ月間、再び子どもたちと過ごすご縁をいただいた。今度は非常勤講師で三年生の副担任となった。子どもたちに学習の意欲を起こさせ楽しさを感じさせる取組があり、その中でまた輝く笑顔に出会うことができた。

 ある日の授業は「文学の世界で活躍した著名人を漢字で書こう」という内容。三年生は、正岡子規、与謝蕪村、小林一茶、石川啄木の四人の人物名を漢字で正しく書けることが到達目標である。テストを四回やったが一人の名前しか書けないMさん。「休み時間に、私といっしょに練習しよう!次のテストは頑張ろう!」とエールを送り、Mさんに寄り添うことにした。
 最初は伏し目がちで無表情だったMさんが毎日休み時間に練習を頑張るようになった。そして、五回目のテストで見事、全問正解!きっと家でもたくさん練習してきたのだろう。花マルのついたテスト用紙を受け取ったMさんは、喜びに輝く笑顔であった。その後、高学年の問題(十人の人物名)にも挑戦するといった態度を示した。
 親子日記に、「わたしは何度も何度も人物名を書きました。五回目は四つできました。六回目は七つできました。うれしかったです。」
 母親からは「先生が、やる気スイッチをオンにしてくださった。」
と感謝の言葉。Mさんの輝く笑顔に喜び、元気スイッチをオンにしてもらったのは私である。感謝したいのはむしろ私の方である。

 もう一つは若い先生たちの笑顔。毎日懸命に打ち込む中で素敵な笑顔を見せることがある。「問題が起きて迷ったり悩んだりした時も、いつも子どもたちにとって一番いい解決策は何かなと考えながら笑顔で接するようにします」と。
 明るく前向きに笑顔で取り組む姿勢に大きな共感を覚える。未来に向かって努力し着実に力量をつけている若い先生たちを、私はこれからもずっと応援していきたい。

 最後に、子どもたちの笑顔が輝くような取組を提案し日々指導して下さった吉永幸司校長先生に心から感謝の言葉を申し上げたい。
(前京都女子大学附属小学校教諭)