能楽体験と狂言の学習
西 村 嘉 人

 彦根ロータリークラブの主催で「体験・発見!能楽ワークショップ」があった。本市の彦根城博物館には本格的な能舞台があり、能を鑑賞するには十分な環境である。しかし、子どもたちと「能」との接点は皆無である。せっかくの機会であるので、頂いた資料を使って先行学習を行い、そのついでに国語の教科書の「柿山伏」に掲載されている能舞台等の説明を行った。

 「能楽ワークショップ」当日は観世流仕手方 中森寛太先生が「能」について子どもたちに分かりやすく説明をされ、囃子方の体験を代表児童が行った。また、これまでわたしも見たことがない舞台の上で能装束を身につける実演も見せてもらい、最後に「竹生島」の舞を鑑賞した。

 子どもたちの反応は、「衣装がきれい」「踊りに迫力があった」などの積極的な受け止めと「難しい!」「わけが分からないうちに終わった」の二つに分かれた。予想通りである。

 ワークショップに出かける前に子どもたちには次のように話した。
「おそらく、この機会がなければこのクラスの殆どの人が『能』を見る機会を一生に中でもつことはないと思う。しかし、幸運なことに、一生に一度の機会をもらったのだから、是非二回目、三回目の機会を自分で作れるような体験をしてほしい。」
 素直な子どもたちは「一生に一度」の体験を前向きに受け止めたようである。

 さて、教室では発展の扱いながら「古典に親しもう 柿山伏」の学習を進めた。  導入で、能楽と狂言の関係を簡単に説明してから、わたしが下手な謡と台詞回しで「柿山伏」を子どもたちに演じた。
「では、読んでみます。」
とだけ伝え、一呼吸置いてから
「貝をもたぬ山伏が…」
とやり出したら、子どもたちの目がわたしに集中した。山伏が何とかして柿を落とそうとする場面、とった柿を食べる場面、柿主が現れて、鴉や猿のまねをする場面を子どもたちは笑いながら聞いたのである。子どもたちからは「びっくりした。先生があんなのできるなんて…」という驚きとともに、「僕もちょっとやってみたい」などの感想があった。

 深入りせずに、おもしろそうな場面をということで鴉の鳴き声や、柿主の笑い声などを授業で子どもたちに体験させて、授業を終えた。しかし、来年度から、どんな古典の学習を進めていけばよいかと悩むばかりである。
(彦根市立旭森小)