第14回「新しい国語実践」の研究会 富山大会
「見通しを持って書く力をつける」ことの大切さ
森  邦 博

 「新しい国語実践の研究会・富山大会の「書くこと」の分科会の司会を担当させていただいたので、振り返ってみたい。

 まず、1年生の実践提案は、経験豊富な先生の、入学からの担任する学級で取り組みを報告された。文字表記の前に、「口頭作文」から入るという。
 先生と子ども、子どもと子どもとがお話をする時間と機会を教室にたくさん用意することを、入門期として特に大事にしておられた。そして、1年生の3月にはここまで育てたいという目標を掲げて、年間指導計画を立ててあり、文章を「書くこと」に急がない。ここがすばらしいと思った。
 「読むこと、話す・聞くこと」と、「書くこと」とが総合的、相互補完的にできていくという入門期の特性に合った指導構想がベースにある。そのうえで、一段一段丁寧にステップアップを図っていく。ベテランの先生の手堅い現場の知恵には、学ぶことが多い。

 次は6年生の実践提案。1学期の作文指導を反省して、2学期の指導を構想したというものである。こちらは若手の先生。6年生には論理的な文章を書かせたい、との願いでこの学級の子どもたちの「書くこと」の指導に向かっての報告である。
 2学期の作文指導において気をつけることを洗い出しておかれた。そして、2学期の単元では特に、構成を考えて書くことに指導の中心をおいたというものである。
 1学期の指導を振り返って、2学期の単元を構想するとき、反省点を生かし、新たなテーマを設けて実践に向かおうとされた姿勢には誠実さを感じた。
 構成のしっかりとした作文を書くというねらいの明確さが作文の評価の明確さにもつながる。何ができたらよしとするのか評価の規準・基準が大切であることを学ぶことができる。

 最後の中学校の実践提案は、中堅の先生。表現、特に比喩表現を豊かにすることで、感情や情景表現の語彙・語句を豊かにしていこうと指導されたものである。
 面白く感じたのは、中学1年生に「やまなし」(宮沢賢治作)をテキストにして、表現の良さに目をつけさせ学ばせようとされたことである。今の学年の教科書にのみ目を向けがちな目を開かせていただけた。説明文の構成を考えるときには下の学年の説明文教材を再度を新たな教材として活用することも効果的になる。これまでの学びを振り返り新たな目標をより確かにすることができることになるからである。よい実践の視点を与えていただけたと感じた。
(大津市立田上小)