ここがこういいと言える、そして、書ける(3)
中 嶋 芳 弘

 「ここに気を付けて書くと○○な字が書ける」ねらいが具体的に子どもに意識されると取り組みは深まっていく。書写の学習に必要な用語も、繰り返し使って、子どもたちに共有されていくことでねらいはよりイメージされやすくなっていく。

 硬筆の取り組みに続いて、毛筆に取り組む。(もちろん、毛筆だけを集中的に取り組む場合もある。前の稿を参照)ここで、山本五十六の語録にある「やってみせ言って聞かせてさせて見せほめてやらねば人は動かじ」を思い出す。「言って聞かせて」それだけ、とか「させてみて」文句ばかりいっている。…それでは、実技の伴う指導はできない。

 起筆・送筆・終筆の筆遣いと今日のねらい「文字の大きさ」を押さえながら机間を巡って書いていく。「毛筆の用意ができたら、先生が書きに行きますから、呼んでください。先生の書くのを見たら書き始めましょう。どうしても、もう一枚書きたい人は、時計と相談して、友達に迷惑をかけないように紙をもらいに行きましょう。」

 準備ができた数名が姿勢を正して挙手する。「先生、お願いします」呼ばれたところへ書きに行く。「二画目がどこか考えて、一画目の書き始めの場所を決めます。筆の先が一番に紙につきます。太さが決まったら進みます。筆が紙から離れるときは、とめでもはねでもはらいでも、筆先が最後に離れるように気を付けます」と、周りの子に説明しながら書き進める。「画数が多い字が大きくなりますね。樹立……立の字は、上の横画と下の横画、どちらが長いでしょう」問いかけたりしながら書いていく。実技教科・表現教科では、教師が範を示したり、仲間の児童 の取り組む姿を見つめさせたりして、書き方をのよいところを考えさせたり具体的に示していくことが大切である。教師自らが「ここがこういいと言えて、書ける」ことが求められるわけである。

 文字の構成原理は大きいほど気付かせやすい。毛筆は大きく書ける用具である。硬筆・えんぴつは、大きく書くには不向きであるが、手軽で、修正しやすい。硬筆・チョークは、手軽で大きく書くのに向いているが、全員が取り組むのは難しい。それぞれに用具用材のよさがあり、その使い方について技術的な固有のねらいも生じてくる。一時間の中で多くの用具用材を使うと、ねらいは絞りにくくなり、作品としてみると深まりの浅いものになる。従って「秋の作品作り」や「書き初め」など作品に深まりを求める場合には、用具用材は絞って指導している。
(彦根市立河瀬小)