巻頭言
今、幼児期の言語教育は
橋 本 源 之 助

 ここ数年、乳幼児期、とりわけ幼児期の保育(教育)の重要性を考え、保育園や幼稚園の園内研究会に参加し、小学校教育への連続性とそれに係る保育(教育)の在り方について勉強を進めている。

 小中教育の基盤であり言語力芽生えのベースとなっている幼児期の教育(遊び)に着目している。

 幼稚園で始めて他者を意識し、「せんせい、見て」「先生、あのね」三歳の子どもたちは、驚きや発見したこと、自己の思いを言語で懸命に伝えようとしている。

 もちろん、〇から二歳(乳児期)も重要で、主に母親を中心に家族との生活の中で、周りの大人の表情、言葉かけを通して子どもも見よう見真似で、表情・動作・言語などを総動員し、自己の思いや気持ちを伝えようとしている。

 最近とみに小中学校では、国語力や言語活動などに関心が寄せられている中で、幼児期の言語指導の実態について関心を持ってほしいという願いが私にはある。

 各国では、生きる力の基礎として、人の中で生きていく楽しさを知ることや自分の意見を言える力等を目標に五つの領域(健康・人間関係・環境・言葉・表現)のもとに遊びの中で実践されている。

 とりわけ、「言葉」の領域では、一つは、言葉を交わす喜びをどう育てるかであり、保育者(担任)や友達と会話することが本当に楽しく思える愛情に満ちた関係が大切である。言葉の発達や言葉の数に個人差が大きいが自分の気持ちを伝える技術が未熟でも自分の感動を伝えたい欲求や伝わった時の感動は大きい。この時期には、自分の話を聞いていくれる温かい保育者(担任)の存在は大きい。

 担任は、子どもの言いたいことを聞き出しながら、正しい言葉、伝わる言葉で言い換えをしている。四歳ぐらいになると、子ども同士で「言ったことを受け止め答えてくれる関係」をつくることが必要である。どの園でも「お帰りの会」で一日の出来事などを話す時間を設け、友達が静かに聞き、質問もし言葉のやりとりを楽しむ。

 二点目は、言葉に関する感覚をどう育てるかであり、何よりも経験や体験の豊かさが感覚を磨き、生き生きした言葉を育てると考えられる。このため、園では四季の花や鳥などと出会う自然体験やイメージを豊かにする読み語り等を積極的に実施している。

 是非、小中の教員は園の言語教育(保育)の実態を学んでほしい。
(滋賀大学教育学部特任教授)