▼1文字の読み方で場面が変わる。言葉には不思議な力がある。「の」もその一つである。

▼2年生の日記で「おばあちゃんのおうちへいったの/おもちゃとおかしをもらったの」という文章に出会った。座席の順に音読をさせた。多くの子が「おばあちゃんのおうちへいったの」を読むとき「の」を普通に読んだ。「おもちゃとおかしをもらったの」を読むときも「の」を普通に音読をした。

▼ところが「もらったの?」と「の」を問いかけるように読む子があった。微妙な読み方の違いに「おもしろい」と反応する子があった。「の」と「の?」の読み方は四通りになった。

▼玩具とお菓子を持ってる子にお母さんが「おばあちゃんのおうちへ行ったの?」と尋ねたという意見や友達が「おもちゃとおかしをもらったの?」と聞くという場面を想像する子もあった。「の」の読み方で場面が変わってくることは発見であった。

▼「おばあちゃんの(間)おうちへ(間)いったの」と怒鳴るように読む子があった。その子は、遠くにいるお母さんに大きな声で言っているのだということだった。読み方の違いで、場面の様子や相手との関係、距離の違いまで考えるきっかけになった。

▼読み方も多様。虚心に子どもの声に耳を傾けることから、新しい展開が生まれた授業であった。(吉永幸司)