複数教材の魅力 ―新美南吉を読もう―
川 那 部 隆 徳

 新学習指導要領でその育成が重要視されている習得力と活用力は、それぞれバラバラに育成するのではなく、統合的に伸ばしていくべきものであると考えている。
 そこで、複数の教材を取り上げ、それらを関連させた学習活動を工夫することが効果的であろう。
 教材を複数取りあげる学習の魅力は、次の点で有効にはたらくところにあると考えている。
 @テーマ性のある学習展開
 A学び方をいかす学習展開
 B理解と表現を関連させた多様な学習活動の構成

 今回は@について、同一作者の作品を読み重ね、それらを比較することで、その作者の作品像を見いだすことを主眼に構成した。
 『ごんぎつね』を南吉作品の導入と位置づける本学習では,新美南吉作品の特徴として、特に次の二点に注目した。
 ○物語性が豊かで、話の筋道の「起承転結」が明確であること。
 ○登場人物の心の通い合いや葛藤、事件を経て成長するありのままの人間の姿などを描き、人間性を追求していること。

【指導計画】(全15時間)
第一次 『ごんぎつね』を読んで、新美南吉作品と出会い、南吉作品を読む視点を見いだすとともに、作品像を思い描く。(6時間)
第二次 視点に基づいて、新美南吉の他作品を読み重ね、それらを比較する。(6時間)
第三次 新美南吉作品の紹介をする。(3時間)

【『ごんぎつね』と『手ぶくろを買いに』を比較する場面の実際】
C なんか『手ぶくろを買いに』を読んでいると優しい気持ちになれる。心が落ち着くような感じになる。
C 優しそうな感じがぼくもしたんですど、それは、親子愛から来ているのだと思います。
C ぼくも、読んで優しそうな落ち着いたような感じがしたんですけど、最後戻ってきたとき、殺されなかったり、「こんな暖かい手ぶくろをくれたのですもの」と書いてあるように、それだけ、人間の帽子屋さんも子ぎつねを心配しているのだと思う。それは優しさからくるのだと思います。 (中略)
T 『ごんぎつね』でも優しさが感じられると言っていたね。『ごんぎつね』の優しさと『手ぶくろを買いに』の優しさと、同じ「優しい」という言葉だけれど、どう違うのだろう。
C ごんは兵十は償いや助けたいという気持ちを持って、松茸や栗を持っていった。(後略)

 次時は、『ごんぎつね』と『手ぶくろを買いに』のイメージを色で表し、その理由について話し合うことによって、それぞれの作品のテーマが浮き彫りになっていった。
(滋賀大学教育学部附属小)