読後の感想を伝える
岡 嶋 大 輔
1年生の教室。毎朝の読み語りを楽しみにし、話の世界に入り込みながら朝の時間を過ごしている。読み語りが終わると、「感想を聞いてほしい!」とどの子も活発に手を挙げる。そして、少しの時間ではあるが感想を交流し、楽しいひとときを過ごしている。 その交流の場面で、「伝えたいことはありそうなのだけれどはっきりせず、うまく言葉にできない」といったような子どもの様子もしばしば見られた。これまでの感想を書く場面においても同様のことがいえる。 そこで、感想を表す時に「どのようなことをどのように表せばいいのか」ということが分かって交流できればと考え、授業を構成した。次は、その内の授業場面。 T これは、本を読んだ後の先生の感想です。 と言って次の文を板書した。 <おじいさんはやさしいとおもいました。> 始めはその話の題名も伏せて提示したため感想を表す文としてはとても違和感があったようだった。そして題名(「したきりすずめ」)を明かし、その絵本を読み語り、書き手(ここでは教師)に「聞きたいこと」はないかを問うた。 C どういうところで、お爺さんが優しいと思ったのですか。 T どういうところだと思いますか。 C 雀にご飯をあげたところかな。 C すずめの世話をしてあげたところだと思うよ。 T どれもいけそうですね。先生が「優しい」と思ったのは、お爺さんが、雀を探すために牛や馬の洗い汁を飲んだところです。 そう言って、先程の板書の前に、 <すずめをさがすためにうしやうまのあらいじるをのんだところから> と付け加えた。 C やっぱりそうか。 C 分かりやすくなった。 という声が上がった。そして教師から「どういうところから」「どんなことを思ったのか」ということを明らかにして感想を表すことの大切さを強調した。 これは、「どういうところから」ということが抜けている文を扱った授業場面であるが、逆の「どんなことを思ったのか」ということが抜けている文も扱った。どちらが抜けても分かりにくい感想であることを実感として捉えられたように思う。 感想を誰かに伝えるという場合、受け手の側に立って「分かりにくい」を「分かりやすい」に変えていく過程を実感する経験がどこかで必要なのではないかと考えている。 (滋賀大学教育学部附属小)
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